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平成10年10月28日
食品中のダイオキシン類等汚染実態調査について、平成9年度の報告がまとまった。
この調査は、平成9年度厚生科学研究費(主任研究者:豊田正武国立医薬品食品衛生研究所食品部長)により行われたものであり、調査結果の概要は下記のとおりである。
1 調査目的
ダイオキシン類等(ダイオキシン類*1及びコプラナーPCB*2)の人への主な暴露経路の一つと考えられる食品について、個別の食品のダイオキシン類等の汚染実態を把握するとともに、通常の食事によるダイオキシン類等の摂取量を推計することを目的とした。
2 調査方法
(1) 個別食品調査
(2) 1日摂取量調査(トータルダイエットスタディ*3)
3 調査項目
ダイオキシン類(ジベンゾジオキシン(PCDD)12種、ジベンゾフラン(PCDF)15種)及びコプラナーPCB(Co-PCB)3種
4 調査結果の概要
(1) 個別食品調査
個別食品 | ダイオキシン類 | ダイオキシン類+Co-PCB |
魚介類 (アナゴ、カレイ、ヒラメ、タイ、アジ、サバ、スズキ及びホッケ) | 0.495pgTEQ*4/g(ppt) (0.060〜2.642ppt) |
1.600ppt (0.121〜10.397ppt) |
肉類(牛肉、豚肉及び鶏肉) | 0.241ppt (0.004〜2.949ppt) |
0.295ppt (0.011〜2.960ppt) |
乳・乳製品(牛乳、チーズ) | 0.062ppt (0.008〜0.151ppt) |
0.105ppt (0.012〜0.263ppt) |
穀類(米) | 0.002ppt (<0.001〜0.012ppt) |
0.007ppt (<0.001〜0.028ppt) |
豆類(大豆・小豆) | 0.009ppt (0.001〜0.029ppt) |
0.014ppt (0.002〜0.039ppt) |
芋類(サツマイモ) | 0.013ppt (<0.001〜0.045ppt) |
0.015ppt (<0.001〜0.045ppt) |
野菜類等(リンゴ、キュウリ、長ネギ、白菜、小松菜、ホウレン草及びシイタケ) | 0.042ppt (<0.001〜0.370ppt) |
0.053ppt (<0.001〜0.430ppt) |
(2) 1日摂取量調査(トータルダイエットスタディ)
ダイオキシン類 | ダイオキシン類+Co-PCB | |
1日摂取量 | 48.0pgTEQ/day (29.9〜69.5pgTEQ/day) |
120.7pgTEQ/day (68.7〜158.8pgTEQ/day) |
体重kg当たりの1日摂取量 | 0.96pgTEQ/kgbw/day (0.60〜1.39pgTEQ/kgbw/day) |
2.41pgTEQ/kgbw/day (1.37〜3.18pgTEQ/kgbw/day) |
数値は平均値、( )内は範囲を示す。なお、体重kg当たりの1日摂取量は日本人の平均体重を50kgとして計算している。
5 今後の方針等
平成10年5月、WHO(世界保健機関)欧州地域事務局とIPCS(国際化学物質安全性計画)が開催したダイオキシン類の耐容1日摂取量の見直しに関する専門家会合で、ダイオキシン類等の耐容1日摂取量を「2,3,7,8-TCDDとして体重1キログラム当たり1日1〜4ピコグラム」とすることで合意されたことをうけ、生活環境審議会と食品衛生調査会の合同部会として「ダイオキシン類健康影響評価特別部会」を設置し、ダイオキシン類等の耐容1日摂取量について専門的見地から検討いただいているところであり、本部会において、今回の調査結果を踏まえた食品衛生上の対策の必要性も含めて検討していただく予定。
また、平成10年度においても、平成9年度に引き続き、トータルダイエットスタディによるダイオキシン類摂取量調査及び個別食品のダイオキシン類等汚染実態調査を行うとともに、過去からのダイオキシン類等の摂取量の推移を調べる等、更なる調査研究等を実施する予定。
平成8年度 | 平成9年度 | |||||||||||||||||
調査地区 | 3地区 | 7地区 | ||||||||||||||||
1日摂取量 pgTEQ/kgbw/day |
ダイオキシン類 0.63±0.17(0.44〜0.75) |
ダイオキシン類 0.96±0.23(0.60〜1.39) | ||||||||||||||||
ダイオキシン類+Co-PCB 1.60±0.43(1.10〜1.89) |
ダイオキシン類+Co-PCB 2.41±0.63(1.37〜3.18) | |||||||||||||||||
検出限界 魚介類 肉・卵 乳・乳製品 |
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「トータルダイエットからのダイオキシン類及び3種Co-PCBの平均摂取量は、昨年度の平均摂取量1.6pgTEQ/kgbw/dayより増加しているが、この原因として、主要な摂取群である第10群の魚介類、第11群の肉類及び第12群の乳・乳製品の分析における検出限界が昨年度よりほぼ1桁下がり、検出化合物の数が増加したことが考えられ、摂取水準が昨年と比べて、急激に増加したとは考えにくい。ちなみに、今年度の分析結果を昨年度の検出限界値を用いて整理し直した場合、その平均摂取量は1.8pgTEQ/kgbw/dayとなり昨年度にほぼ近い値となる。」(報告書より)
*1:ダイオキシン類
ダイオキシン類は多くの異性体をもつポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD)類及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)類の総称。化学物質の合成過程や燃焼過程で非意図的に生成される。置換している塩素分子の数と場所によって、それぞれ75種類及び135種類の同族体をもつ化合物群。
*2:コプラナーPCB(Co-PCB)
PCDD及びPCDFと類似した生理作用を示す一群のPCB類。
*3:トータルダイエットスタディ
通常の食生活において、食事を介してどの程度のダイオキシン類が実際に摂取されているかを把握するための調査方法。
調査に適切なモデル献立を設定するため、平成5年度国民栄養調査又はその基礎データとなった食品摂取量のサブデータを用い、全食品群を飲料水を含めた14の食品群(1群:米・米加工品、2群:穀類・種実類・芋類、3群:砂糖類・菓子類、4群:油脂類、5群:豆類、6群:果実類、7群:緑黄色野菜、8群:その他の野菜・茸類・海草類、9群:調味・嗜好飲料、10群:魚介類、11群:肉類・卵類、12群:乳類、13群:その他の食品、14群:飲料水)に分類し、それぞれの1人1日摂取量をもとに試験地域の食品構成と数量を定め、市場、小売店から購入した各食品について通常行われている調理の方法に準じて調理を行う。調理を行った後、各食品群についてダイオキシン類の分析定量を行い、各食品群毎のダイオキシン類の1日摂取量を算出し、これらを総和することによりダイオキシン類の1人1日摂取量を求めるもの。
*4:TEQ
毒性等量(TEQ:Toxic
Equivalents)のことで、ダイオキシン類のそれぞれの異性体の毒性を2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)に換算して合計したもの。
ダイオキン類の中で2,3,7,8-TCDDが最も毒性が強いことから、多くの毒性試験がこの化合物単体について行われている。したがってダイオキシンの定量値については、各異性体ごとに設定されたI-TEF(International
Toxicity Equivalency
Factor,国際毒性等価係数)を用いて2,3,7,8-TCDDの毒性を1としたときの相対的な量(毒性等量(TEQ))に換算した。
問い合わせ先 厚生省生活衛生局 乳肉衛生課 担当:滝本、吉田(内線2473、2478) 食品保健課 担当:山田、森田(内線2446、2451) Tel.03-3503-1711(代表)
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