98/03/13 食品衛生調査会毒性・器具容器包装合同部会議事録 食品衛生調査会毒性・器具容器包装合同部会 議事録 日 時:平成10年3月13日(金) 17:00〜19:15 場 所:中央合同庁舎共用第6会議室 出席者:池上 幸江、黒川 雄二、寺尾 允男、戸部 満寿夫、長尾 美奈子、 中澤 裕之、 成田 弘子、林 裕造、福島 昭治、三森 国敏、丸山 務 (各委員) 井口 泰泉、井上 達、河村 葉子、鈴木 勝士、山田 隆(各臨時委員) 厚生省:小野生活衛生局長、黒川食品化学課長、森田乳肉衛生課長、高谷輸入企画 指導管、他課長補佐以下8名程度 オブザーバー:農林水産省、環境庁、通産省 ○黒川食品化学課長 それでは定刻となりましたので、ただいまから食品衛生調査会毒性・器具容器包装合 同部会を開催いたします。本日は、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありが とうございます。 本日は、毒性・器具容器包装部会の委員のほかに臨時委員の井口先生、井上先生、鈴 木先生、河村先生、山田先生に御参加をいただいております。毒性・器具容器包装部会 の委員各10名中、毒性部会6名、器具・容器包装部会7名の先生方に御出席いただき、 過半数に達しておりますので、本日の毒性・器具容器包装合同部会が成立いたしており ますことを御報告申し上げます。 また、黒川委員は遅れて参加される旨、御連絡をいただいております。 事務的な連絡になりますが、本日速記のためにマイクを使用しております。各委員の 先生方、御発言の際はマイクを御使用されるようお願い申し上げます。 まず、開催に当たりまして小野生活衛生局長からごあいさつ申し上げます。 ○小野生活衛生局長 生活衛生局長の小野でございます。食品衛生調査会毒性・器具容器包装合同部会の開 催に当たりまして一言ごあいさつを申し上げます。 本日、委員の先生方におかれましては大変御多忙の中、本合同部会に御出席をいただ きました。また、平素より各専門分野におきまして食品衛生行政に御尽力いただいてお りまして、この場をお借りいたしまして御礼を申し上げます。 近年、食品用プラスチック容器から溶出いたします可塑剤、あるいはモノマー等の化 学物質が持っております内分泌かく乱作用によります人の健康への影響につきまして大 きな懸念が示されていることは御承知のとおりでございます。 本問題につきましては、我が国の国会においても議論が交わされておりますし、また OECDあるいはWHO等の国際機関あるいは米国、欧州を始めとする諸外国におきま してもさまざまな観点から検討が進められているところでございます。 このような状況を踏まえまして、本日はポリカーボネート樹脂等の3品目につきまし て、これまで報告されました主な内分泌かく乱作用に関します文献、それからこれらの 樹脂からの溶出量に関する文献等につきまして御報告をさせていただきまして、これら 3品目の安全性について御議論をいただきたいと考えております。国民の健康の確保と いう食品衛生行政の初期の目的を達成いたしますために、先生方の忌憚のない御意見を 賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 ○黒川食品化学課長 それでは、以下の進行につきまして、慣例によりまして戸部部会長よろしくお願いい たします。 ○戸部部会長 本日は、お忙しいところを御参集いただきましてありがとうございました。 それで は、これから今、局長からもお話がございましたように、3品目の安全性を主題として 審議をお願いする訳でございますが、まず事務局から配布資料について確認をしていた だきます。どうぞよろしくお願いします。 ○中垣補佐 それでは、本日の配布資料について御確認させていただきます。お手元に提出資料一 覧という2枚紙が配られているかと思いますが、これに沿いまして御確認させていただ こうと思います。お手元のクリップの3枚目、あるいは4枚目に当たると思います。 資料の1番、「食品衛生調査会の公開について」、これについては既に事前に送付させ ていただいております。 資料の2番、「エンドクリン問題について」、これについては既に配布させていただ いたものと全く同様でございますが、本日お手元の方へ配布させていただいております 資料の3番、「内分泌かく乱作用に関する報告書等について」、これも既にお配りさせ ていただいているものと同様でございますが、本日お手元の方に配らせていただいてお ります。 資料の3−1から3−4は各報告書でございまして、これはあらかじめ送付させてい ただいたものでございます。 資料の4がポリカーボネートの文献概要でございますが、これにつきましては新しく 本日お手元にお配りさせていただいております。 また、資料の4−1から4−13までございますけれども、このうち資料の4−13は新 しく本日配らせていただいているものでございます。 資料の5は本日新しく差し替えさせていただいておりますが、資料の5−1から資料 の5−18、これにつきましては既にお配りさせていただいているものでございます。 また資料の6、これは本日新しく差し替えさせていただいておりますけれども、資料 の6−1から資料の6−17まではあらかじめお配りさせていただいているものでござい ます。 資料の6−18と資料の6−19は、本日お手元にお配りさせていただいております。 また、資料の6−15に一部追加をさせていただいて本日お手元にお配りさせていただ いているものでございますが、ふぞろい等がございますれば御指摘いただければと思い ます。よろしくお願いいたします。 ○戸部部会長 大部の資料でございますので、あるいは欠落があろうかと思いますが、確認をお願い いたしたいと思います。よろしいでしょうか。 それでは議事に入りますが、まず本日の合同部会がどういう経緯で開催されるに至っ たかということについて、事務局より説明をいただきたいと思います。どうぞ。 ○黒川食品化学課長 座って失礼をいたします。 食品に用いられます器具、容器、包装につきましては、食品衛生法第9条及び第10条 に基づき、公衆衛生上の観点からこれまで必要な対応がとられてきているところでござ います。このエンドクリン問題につきましては、国際的に見て検討が進んでいると思わ れます米国におきましても、現在は状況の把握のための方法論などを検討しております 段階であり、今回取り上げておりますプラスチック製食器などについて、飲食に起因す る健康被害などの観点からの対応はなされていないと承知しております。 しかしながら、先ほど小野局長から申し上げましたような経緯を踏まえ、衛生上の危 害の発生を防止する、これに万全を期するという観点から、この内分泌かく乱作用との 関連が指摘されておりますポリカーボネート樹脂など、3種類のプラスチックについて 現在までに収集されたデータや情報を基に、問題点の整理と評価をめぐり御議論をいた だきます。このことは非常に意義あるものと考えております。 限られた時間でございますが、以上の経緯を御理解の上、よろしく御審議のほどをお 願い申し上げます。 ○戸部部会長 ありがとうございました。ただいま黒川課長から合同部会開催の経緯をお話をいただ きました。このことについて何か御質問あるいは疑義がございましたら、どうぞ御発言 をいただきたいと思います。何でも結構でございます。ございませんでしょうか。 では、経緯についてはお分かりいただけたということで次に進めさせていただきます それでは、本日はポリカーボネートを始めとする3つの材質についての問題を逐次御 審議をいただく訳でございますが、まず総体的な問題についての説明を事務局の方から いただいて、それから個別にということでございます。 まず資料1、2、3についてでございますが、黒川課長の方から御説明をいただくと いうことにいたします。どうぞ。 ○黒川食品化学課長 では、資料1をごらんいただきたいと思います。「食品衛生調査会の公開について」 平成9年4年21日付、常任委員会決議と題されたものでございます。 食品衛生調査会 の議事資料等の公開につきましては、平成8年8月2日の総会において決議されており ますが、下記のとおり取り扱うものとして4月にまた改めて決議がされております。 まず、委員の氏名等の公開でございますが、氏名、職業についてはこれを公開するも のといたしております。 それから、会合の活動状況の公開でございますが、開催予定、日時、場所等について 決定後、速やかに公開するものとするという御決議をいただいております。 それから、会議の公開でございますが、総会は原則として公開いたします。 ただし、委員長が、公開することにより委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立 な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などにつきましては非公開とすることが できるとなっております。常任委員会及び各部会についても同様ということでございま して、本合同部会についても同様の扱いになります。 次に議事録の公開でございますが、議事録につきましては発言者氏名を記した上、公 開をいたします。個人の秘密、企業の知的所有権等が開示され、特定の者に不当な利益 不利益等をもたらすおそれがある場合には非公開とすることができるということは、先 ほどの審議と同様でございます。 それから、5に提出資料の公開、それから必要な事項につきましては委員長が決定で きるということが記載されておりまして、適用は9年6月1日以降に開催される総会等 となっております。この決議に従いまして、本日も公開ということになっております。 以上が、資料1に関してでございます。 次に資料2、「エンドクリン問題について」という資料をごらんいただきたいと思い ます。本日、個別に御審議いただきます3種類のプラスチックに関しまして御検討いた だく前に、一般的な本問題の概要を御説明申し上げます。 化学物質の中には、生体内に取り込まれまして内分泌機能を中心に広範な影響を及ぼ すものがあり、これがヒトを始めとする生態系に深刻な影響を与えている可能性がある と言われております。これがエンドクリン問題というものです。これは本問題について 啓発的に記されております『奪われし未来』の発刊によりましてかなり大きく反響を呼 んでいる状況にございます。 これらの化学物質はさまざまな言われ方がされておりまして、環境ホルモン様物質、 内分泌かく乱化学物質等と総称されておりますけれども、定義は現時点ではまだ確立さ れておりません。 なお、この『奪われし未来』の内容からピックアップいたしますと、これらの化学物 質の暴露等によりまして、例えば乳がん、睾丸腫瘍の発生増加、精子数減少、このよう なヒトへの障害や、野生生物への影響の可能性などが指摘されておるところでございま す。 この作用を持つと指摘されている物質でございますけれども、例といたしましてはD DT等の一部の農薬、それからプラスチック可塑剤の一部、PCBなどの工業化学物質 ダイオキシンなど汚染物質等ということが挙げられております。 本問題につきましては、世界各国で活発な取り組みが行われておりまして、資料に年 表の形で記載されておりますとおり、OECD、それから米国の環境保護庁、国連の化 学物質に関するフォーラム、G7等、記載のとおりの活動がなされております。我が国 におきましては次のページに記載されてございますが、通産省、厚生省、環境庁、農林 水産省、労働省等におきまして研究活動等が進められているということでございます。 次に資料3に移らせていただきます。本日御審議いただきますプラスチック関係の内 分泌かく乱作用でございますが、いずれにおきましてもこの内分泌かく乱作用一般につ いて報告されました文献等に収載がされております。前提といたしまして御紹介を申し 上げます。 まず、資料3の初めの丸に書いてございますとおり、平成8年度の厚生科学研究、 「化学物質のクライシスマネジメントに関する研究」によりまして、内分泌かく乱作用 のうちエストロゲン作用を中心に欧米における検討状況と知見の把握、それから指摘の あった三十数種の化学物質に関する文献調査などが行われており、これに基づいて今後 の研究課題が整理されているという特徴が見られます。この報告の主要な部分は、資料 3−1として添付してございます。本報告からは特段結論めいたものは見られておりま せん。 それから2つ目でございますが、資料の3−2といたしまして「外因性内分泌かく乱 化学物質問題に関する研究班」(環境庁)の中間報告がございます。その概要でござい ますが、これまでの報告、それからメカニズムに関する考え方などをまとめておりまし て、記載のとおりこれまでに得られている知見からは一般生活において内分泌かく乱化 学物質がヒトに影響しているか否かを判断することは困難であると、このような考え方 が述べられております。 ちなみに、一部申し上げますと資料3−2でございますけれども、そのページの2の 第2パラグラフの少々上の部分でございますけれども、ヒトの健康影響についてはホル モン薬による腟がんの誘導等の例が報告されているが、環境中の内分泌かく乱化学物質 の影響を示すと考えられる一般住民における精子数の減少や乳がんの増加などについて 諸説があり、結論に至っていない。このようにヒトあるいは環境、動物等の例を記載し てございます。 次に、内分泌系に作用する化学物質に関する調査研究結果、資料3−3でございます が、これを御紹介申し上げます。概要は、資料3の下半分に記載してございますとおり ですが、具体的には11種の化学物質について体内における各種ホルモンレセプターへの 作用等についてまとめられております。 それから、資料3−4に米国環境保護庁、EPAの内分泌かく乱物質スクリーニング と検査の方法に関する諮問委員会、EDSTAC(エドスタック)などと言われており ますけれども、この報告案が紹介されております。このEDSTACは、内分泌かく乱 化学物質のスクリーニングと検査の計画についてEPAに助言するために1996年、コル ボーン博士ら39名の委員により設けられたものです。コルボーン博士は、先ほど御紹介 いたしました『奪われし未来』の著者のお1人でございます。対応の優先順位づけ、ス クリーニングと検査、コミュニケーション等、4つのワーキンググループからなってお ります。今年の2月に公表されまして、インターネットで入手可能になっております。 私どももそういったルートから入手いたしまして、これを資料3−4として記載してご ざいます。 この資料3−4をごらんいただきたいんですが、一番最後のページになると思います が、ページ26にヒューマンエフェクトというところがございます。そこの冒頭から、例 えばジエチルスチルベストロールのような数少ない例外はあるものの、特定の環境物質 に対する暴露と、それからこの内分泌かく乱作用メカニズムを通した、これによる作用 に基づくと思われるヒトの健康影響、悪影響でございますが、それについてはまだ確立 されていない。因果関係はまだ確立されていないというような記載がございまして、そ のパラグラフの下の方の部分になりますけれども、例えばこのようなものは動物などで かなり観察されておりますけれども、これがやはり同様にヒトに起きるのではないかと いうように仮説もなされている。しかしながら、この時点においてはほとんど証拠がな い。実験といいますか、研究もなかなか行われていないというような状況にある。それ で、エビデンス・ザット・イズ・アベイラブル・フォー・サッチ・エフェクツという最 後の1行でございますけれども、ヒトにおけるこのような影響についての利用出来る証 拠から見ると弱い。また、その可能性については証拠や完全な知識なしの意見の段階に とどまると、このようなことが述べられております。 また更に、新生児や、それから胎児についての記載がございまして、最後の4行でご ざいますけれども、これらの各種の作用が人間の胎児や、それから新生児に与える影響 等については更に情報が必要である。また、その新生児等についてはその上段に記載が ございますが、自然界に存在する内分泌作用物質に対する成人に存在するプロテクショ ンが欠けているかもしれないということを考慮する必要があると、このような記載が述 べられております。 なお、直接食器容器には関連いたしませんが、かなりのページを割いてそのほかの物 質等について記載がございます。例えば、大豆に含まれておりますイソフラボンといっ たようなものの天然物中の内分泌かく乱作用物質についてもかなりの記載がございます なお、本日は資料の全体の量の関係がございまして全体については添付してございま せん。 以上で、私の説明は終わります。 ○戸部部会長 ありがとうございました。全体像がお分かりいただけたかと思いますが、ただいまの 課長の説明されました資料について、少し御議論をいただきたいというふうに思います が、いかがでしょうか。何か御発言ございませんでしょうか。 我が国でも関係する各省がすべてそれぞれの対策を立てられてやっておられますし、 また海外でもアメリカを始めOECD、国際機関を含めてそれぞれ対応をされている訳 でございますけれども、全体として何かまだ少し分かりにくいという点はございますで しょうか。 よろしゅうございましょうか。それでは、時間もございますので個別の説明に入らせ ていただいてよろしゅうございましょうか。 それでは、まずポリカーボネートについて事務局より説明をいただきたいと思います どうぞ。 ○中垣補佐 それでは、資料4及び資料の4−1からのものについて御説明を申し上げます。 最初にお断り申し上げておきますけれども、資料の4は事務局で審議の便宜のために 資料の4−1から各資料の文献についてその概要をまとめさせていただいたものでござ いますので、そういう意味から申し上げますと概要のまとめ方に不都合な点があるかも しれませんので、是非資料の4−1から4−13を御参照いただきたいというふうに考え ております。 まずポリカーボネートの使用量、基準でございますけれども、資料の4に沿って御説 明申し上げますが、ポリカーボネートはビスフェノールAと塩化カルボニルまたはジフ ェニルカーボネートをモノマーとして形成されるポリマーでございます。 この構造式等につきましては、資料の4−6をごらんいただきたいと思います。資料 の4−6の61ページをごらんいただきますと、ビスフェノールAの構造式並びにその物 性がまとめられております。 資料の4にまた戻らせていただきましてポリカーボネート樹脂の食品用途への使用量 についてでございますけれども、ポリオレフィン等衛生協議会の調べによりますと、年 間生産量が25万1,000t、うち食品用途へが約4,000tというふうに聞いております。ま た、食品用途以外の主な用途はコンパクトディスク、あるいは車のランプカバー等に使 われておると聞いています。 更に給食について文部省が調べたところによりますと、給食を実施しているところの 16.8%、5,240 校が利用をしておるというふうに聞いております。 次に、食品衛生法に基づく規格基準でございますが、平成6年1月に規格基準を制定 させていただいたところでございまして、ビスフェノールAの溶出量の基準値について は2.5ppmという形になっております。また、EUあるいはアメリカの規制値はここに書 いてあるとおりでございます。更に材質試験と申し上げて、材質中に含まれておるビス フェノールAの値を定めておりますが、500ppmという基準値を定めさせていただいてお ります。 次に安全性に関する資料でございますが、最初の資料、これは14Cのビス フェノールAをラットに投与した資料でございまして、いわゆる体内動態を調べており ます。投与後8日間内に尿中に28%、糞中に56%の排せつが見られた。また、体内への 残留は見られなかったというようなことが書かれておろうかと思います。 その次の資料はNTP、アメリカのナショナル・トキシコロジー・プログラムという NIHが中心にやっておるものでございますが、ラット、マウスを用いて発がん性は見 られていないという結論でございます。 その次の資料がオレアさん、あるいはソトさんを中心にやられた資料でございまして ラット子宮細胞質画分を用いてトリチウムラベルしたエストラジオールとの結合拮抗を 調べた試験で、エストラジオールの結合親和性を100 とするとビスフェノールAの親和 性は100 に対して0.012 であったというのがこの報告でございまして、コンペティティ ブ・バインディング・アッセイというような呼ばれ方がしておるかと思います。 その次の資料は、酵母を培養するときに予想出来ないようなエストロゲン作用が見ら れる3つのケースに触れたものでございまして、1番目が培地中にエストロンが含まれ ておって、そのエストロンがエストラジオールに変化していくということ。次が、トウ モロコシあるいはビートの糖蜜にはエストロンがやはり含まれておって、これがエスト ラジオールに変化していく。最後がポリカーボネート製のフラスコから溶出するビスフ ェノールAがエストロゲン作用を示すということでございまして、このエストロゲンレ セプターへの結合能について、これは93年のプリシナンという方の文献を引用しており ますけれども、方法としては資料4−3のオレアさん、ソトさんの文献と同じであろう と考えておりますが、レセプターへの結合能はE2 の2,000分の1というふうに報告して おります。 次の資料が、ナーゲルさんらが97年に報告した文献でございまして、この中に2つの 試験が行われております。すなわち、MCF−7というヒト乳がん培養細胞を用いてエ ストロゲンレセプターとの親和性を調べたというものでございまして、ビスフェノール Aの親和性は培地に血清を添加しない場合0.006 、成人男子血清を添加すると0.01と上 昇するというような結果が1つ。 それともう一つは妊娠マウスでございますが、妊娠マウスにビスフェノールAを2μg 及び20μg/Kg/day 、コーンオイルで溶かして1日1回投与したということでございま して、ゲステーション、妊娠の11日目から17日目まで1日1回ずつ投与したということ でございますが、その結果、ここは訂正いただきたいんですが、精巣ではなくて前立腺 です。前立腺の重量の増加が認められたとする文献でございます。 その次の文献は、アメリカのEPAがビスフェノールAのRfD、アメリカではRf Dという言葉を使っておりまして、我が国で申し上げますとADIあるいはTDIに相 当するんだろうというふうに考えておりますが、これを評価したものでございます。 結果的に申し上げますと、RfDはラットの長期の毒性試験において1,000ppm、50mg /KgをLOAEL、最小毒性量として1,000 の不確実係数、これを用いて0.05mg/Kg/d ay というふうに設定しております。 なお、数字としてはEUも同じADIを設定しております。この資料の、1)2)におい て投与の「与」という字が「予」になっておりますのでここも御訂正いただきたいんで すけれども、この文献は先に御紹介いたしましたNTPの資料の4−2と同じでござい ます。1,000ppmで体重減少が見られたというものでございます。 3)の亜急性毒性試験もイヌ、ラット、マウスで実施されております。 3ページでございますが、高用量で肝重量減少が見られたほか、他の毒性は見られて いない。したがって、この体重減少というのをどうとらえるかというのが論議されてお るのでございますけれども、ラットの亜急性毒性試験の成績から長期の毒性試験におけ る体重減少のNOAEL、無毒性量は1,000ppmではないけれども1,000ppmに非常に近い ということで、ここは安全係数、不確実係数で考えるというような考え方が示されてお りまして、非常に近いということを考えると通例の100に付け加える10の不確実係数はコ ンサーバティブなもの、保守的なものというふうな評価がされております。その結果と して、先ほど最初に申し上げましたようなRfD、ADIが設定されております。その ほか、繁殖試験、催奇形性試験等についても記載があります。 その次の資料でございますが、これはイギリスの保健省の食品・消費者製品環境中化 学物質の毒性に関する委員会の報告でございまして、この報告は資料4−13で御説明申 し上げましたナーゲル、先ほど申し上げましたエストロゲンレセプターとの結合能を調 べたもの、及びマウスに2μgあるいは20μg/Kg/day を投与したという実験結果をど うとらえるかというのを論議したようでございまして、それに関する結論及びその理由 が載っております。 「これに対し」で始まる段落を御説明申し上げますと、まず1つにはイギリスの農業 漁業食品省の調査によると、乳児用のボトルを洗浄した液からのビスフェノールAの溶 出は不検出、すなわちそのときの検出限界が0.03mg/Kgなんですけれども、それ未満で あった。また、ビスフェノールAの強さと申しますか、エストロゲン様作用の強さでご ざいますけれども、これは先ほどから見ていただいたように、エストラジオールの1,000 から1万分の1程度である。 次の理由としては、前立腺重量の増加が見られているんですけれども、これは通常評 価されるような項目でなくて、その重量増加の機序も不明である。また、4−13の論文 を見ていただきますと、前立腺重量が増加したとは書いてあるんですが、それ以外の所 見というのは一切報告されておりません。恐らくそれを受けたんだろうと思いますが、 雄の生殖に関する他の指標が示されれば評価に役立つ、逆に言うと、4−13の文献の中 でそれらの所見が示されていないというようなこと、更にアメリカのプラスチック学会 の報告によると、生殖に影響が見られるのは非常に高い用量であるというようなことを 述べて、最終的にビスフェノールAのヒトへの暴露に関する結論を導くほどのものでは ないというような評価がされております。 次に、4−6の資料は先ほど御紹介いたしました通産省の委託の調査の結果のビスフ ェノールAに関する関係部分でございまして、今まで見ていただいたもので大体尽きて おるかと思いますので省略させていただきます。 次に暴露と申しますか、溶出量に関する文献を集めております。 1つ目は国立医薬品食品衛生研究所の河村先生、山田部長を中心にやられた試験でご ざいまして、現在投稿中のものでございますが、ビスフェノールAの材質中濃度が372か ら599ppmで 、これらはいずれもフェノール等を加えると基準値の500ppmを超える違反品 ですが、この4品目について試験をしていただいております。その結果、溶出量はn− ヘプタンの25度60分が一番高い。水の90度30分及び4%酢酸95度30分、20%エタノール と、こういう順であった。なお、水90度30分のデータの溶出量は最高26.3ppb という数 字でございます。 2行目に28.8から39.1ppm とありますが、これは事務局のミスでございましてppb で ございますので御訂正いただきたいと思います。ppb でございます。 もう一つの試験が、幾つかの試験をこのレポートの中でやっていただいておりますが 洗っていない試料も分析していただいております。その中では高い溶出が見られたもの があるけれども、煮沸後の試料では1ppb 以下となったということでございまして、ほ 乳瓶についても試験をいただいておりますけれども、ほ乳瓶のデータは未洗浄の場合3.9 ppb、これを洗浄または煮沸すると不検出、すなわち0.5ppb未満というような結果が報告 されております。 その次の報告、これは環境庁委託によりますリターナブル・プラスチックボトルモデ ル事業研究会等によります報告書でございますが、ポリカーボネートボトルをオランダ の研究機構の条件、これは非常に厳しい条件といわれており、苛性濃度で申し上げます と1.5 から1.7 %、これで75〜80℃10分程度の浸漬、あるいは噴射をするというような 洗浄の条件なのでございますが、こういう条件に沿って15回洗浄する。15回洗浄すると 最初透明だったボトルが白化と申し上げて不透明になってしまうというような現象が見 られておりますし、50回洗浄すると全く白くなってしまうというような現象がまず見ら れております。 もう一つの試験はビスフェノールAの溶出を調べておりまして、ここに書いてあるよ うにn−ヘプタン、エタノール、水、酢酸、こういうもので試験をした結果が報告され ております。未使用品の水95度30分では6ppb 、15回洗浄品では先ほど申し上げました ように白化する訳でございますが7ppb というのが1検体ずつありますけれども、それ 以外の15回までの洗浄品では検出限界以下ということになっております。 なお、ほとんど真っ白くなってしまう50回の洗浄で最大64ppb 、100 回の洗浄で180pp bの溶出が見られたというようなことが報告されております。 その次は、東京都の都立衛生研究所が平成9年度に行ったポリカーボネートの試験結 果でございまして、67検体の試験が実施されております。それで、67検体中溶出が見ら れたのは1検体でございまして、ここに書いてあるような数字でございます。 下から2番目の資料、缶のコーティングの資料でございまして、これはポリカーボ ネート樹脂というよりはエポキシ樹脂に当たるのでございますが、そのエポキシ樹脂に もやはりビスフェノールAが使われておりまして、そのエポキシ樹脂が使われておる缶 詰の缶でございますが、これを30分125 度でオートクレーブで熱処理したときの缶中の 濃度が測定されております。中に入っている野菜あるいは果物によってその濃度が違う のでございますが、ナシの缶、あるいはアンチチョークの缶、あるいはグリーンビーン ミックスベジシブル、コーンマッシュルームというもので検出がされております。 最後の資料が、日本子孫基金が発行しております「食品と暮らしの安全」の資料でご ざいまして、赤ちゃん用のほ乳瓶からビスフェノールAの溶出量を測定したところ、26 度では不検出であったが95度の熱湯では3.1 から5.5ppbの検出がされたということでご ざいまして、以上でございます。 ○戸部部会長 ありがとうございました。ビスフェノールAについての概略でございましたけれども かなりいろいろな面のデータを含んで紹介されました。それぞれ御専門の立場で更に御 検討をいただいて御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。 ○長尾委員 ちょっと質問をしてよろしいですか。この溶出されるものの表現がppb というのは、 元の材料の10の9乗分の1という意味ですか。 ○戸部部会長 今日は河村先生がおいでになっていますので。 ○河村委員 溶出液を使いました、その液中の濃度ということです。 ○長尾委員 液がどのくらいのボリュームかによって、この値が変わってくると思うんですけれど も。 ○河村委員 そうですね。一般的に使う場合の溶出量として、200mlのほ乳瓶ですと200mlを使った 量と、それから食品衛生法では1cm2当たり2mlの疑似溶媒を使ってという規定がござい ますので、文献の方を見ていただますと分かるんですけれども、そちらに換算した値と 両方で出しております。 ○戸部部会長 口を差し挟んで恐縮ですが、容器包装でございますので、その容器の中に入るボリ ュームで何ppmと、こういうふうに理解してよろしい訳ですね。 ○河村委員 そのとおりです。 ○戸部部会長 臨時委員の先生方も、どうぞ御自由に御発言をいただきたいと思います。 ○中澤委員 その分析の方法のことでちょっとお尋ねしたいんですけれども、例えば今の都立の衛 生研究所の資料の4−10というのを拝見しておりますと検出限界が0.1ppmというような スケールで書いていらっしゃると思うんですね。それで、この方法と、例えば河村先生 のところでおやりになったような方法の検出限界というのはppb の単位で出てきている というところで、この辺は勿論、測定法の検出限界と考えるよりも試料に対する検出限 界という認識をした方がよろしいんでしょうか。 ○河村委員 都立衛研の資料については行政報告で出された資料だと思います。それで、行政報告 の場合ですと残留基準値が2.5ppm以下というふうに定められております場合にはその10 分の1とか、そういった検出限界をもって測っていれば十分ですし、実験としましては 例えば今回私の方で0.5ppbという検出限界で測りましたけれども、これは非常に時間も それから整備するにも大変な労力が掛かるものですから、このようにたくさんの試料を 測る場合にはこういった非常に低レベルまで測るというところまではこの都衛研の仕事 では求められていなかったと思います。 ○中澤委員 そうしますと、基本的に方法が多分違う可能性もあるというふうに思ってもよろしい んでしょうか。 ○河村委員 方法そのものは違わないと思います。というのは、溶出試験は溶出をしてその後、測 るだけで、測るのもやはりどちらも液クロを使ってやっておりますし、都衛研の方で測 っております方法も現在食品衛生法に載っております規格基準の試験法にのっとってい らっしゃると思いますし、うちもほぼその方法でやっておりますので、根本的なところ は違わないと思いますけれども、どこまでベースラインを下げるかというところの問題 だと思います。 ○中澤委員 ありがとうございました。 ○戸部部会長 どうぞ。 ○鈴木委員 議論が先に進んでいる感じなんですが、せっかく事務局でまとめていただいたんです が、このまとめの中に若干おかしいところがありまして、それを先に指摘しておきたい と思います。 まず資料の4−4の2ページのところで、酵母でやられた思わぬところにエストロゲ ン作用の物質があるということの話なんですが、それの上から4行目のところで「エス トロンが細菌によりエストラジオールに変化される」とあるんですが、これは細菌では なくて酵母です。細かいことで恐縮ですけれども、細菌と酵母ではちょっと違いますの で、そこは御訂正ください。 それから、その下のところのEPAのもので、これは資料4−5になるんですが、2 ページの一番下から3行目の真ん中ほどに肝臓重量の減少が見られたとあるんですが、 これは減少ではなくて増加です。 ○戸部部会長 今、先生がおっしゃっている資料は資料4の日本文でございますか。 ○鈴木委員 ごめんなさい。新しいのは3ページの一番上になっています。 ○戸部部会長 資料4の3ページですね。 ○鈴木委員 そうです。3ページの一番上ですね。肝重量減少は肝重量の増加です。 ○戸部部会長 先ほどの御指摘ももう一度お願いします。 ○鈴木委員 もう一度しますと、2ページの資料4−4の4行目のところで「エストロンが細菌に より」というのは「酵母により」です。 それから、4ページ目のところで資料4−11というのがございます。缶詰のコーティ ングの話のことなんですけれども、その3行目のところでナシの缶とあるんですがペ アーじゃなくてピーズなんですね。ですから、これは豆です。 それから、その次のアンチチョークとなっているんだけれども、これは普通アーチチ ョークというふうに言っているのでアーチチョークに直した方がいいと思います。 それから、その下の最後のところでコーンマッシュルームとつながっちゃっているん ですが、これはコーンとマッシュルームですから点を入れた方がよいと思います。細か いことばかりで恐縮でした。 ○戸部部会長 御指摘をありがとうございました。事務局は非常に助かると思います。 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○福島委員 ちょっと理解のために教えていただきたいんですが、この安全性に関する資料の一番 最初の排泄のところで、資料の4−1の2ページ目のところで、投与後8日間で尿中に 投与した14Cの28%、糞中に56%が排泄されたと書いてありますが、そうすると残りは どうなったのか。例えば、皮膚かどこかほかから排泄されているのか。それから、8日 後では体内への残留は見られなかったということですが、その辺りを知りたいので、ど なたか知っている方があったら教えていただきたいと思います。 それからもう一つは、オートラジオグラフィーか何かやりまして、この体内分布につ いて何かデータがあるのがとうか。例えば前立腺や、乳腺組織での取り込みがあるのか どうかということについてお分かりでしたら教えていただきたいと思います。 ○戸部部会長 事務局、よろしいでしょうか。あるいはこの日本文の今、福島先生がおっしゃった訳 の方の信憑性というのが必ずしも、先ほどの御指摘のようにところどころ違っているか と思いますので、4−1の資料をごらんいただかないと、恐らくその辺の真偽ははっき りしないかと思うんです。 それで今、御指摘のようなことがすべてこの中に盛られているかどうか、今ざっと見 たところ、組織への分布の細かいデータはこれには載っていないように思いますが、い かがでしょうか。今この場で今の御質問に答えられるかどうかという問題でございます けれども。 ○中垣補佐 最初の御質問についてお答え申し上げますと、資料の4−1の183 ページ、資料の4 −1が1965年の文献でございますから、そういう意味で申し上げますとかなり旧い文献 だろうと思いますけれども、訳の信憑性の問題はありますが、サマリーのところを訳さ せていただいた、ここの第1パラグラフでございまして、そういう意味では今でも訳は 間違っていないのかなと思っております。 それで、具体的なデータは179 ページのテーブル1に載っておるかと思います。 ただ、先ほどおっしゃいました分布の詳しいデータがあるかという問につきましては 今、直ちにお答え出来るような状況にはございません。申し訳ありません。 ○戸部部会長 福島先生、よろしいですか。 ○福島委員 といいますのは、下の方でもいろいろなエストロゲン作用があるとか、それから前立 腺の増加が見られるとかというようなところがあるものですから、体内分布がちょっと 分かったらありがたいと思ったんですが。 ○戸部部会長 福島先生が御発言いただいたのでついでで恐縮ですが、先ほど発がん性についてNT Pでの仕事のことが紹介されましたけれども、その辺の紹介は御専門のお立場から間違 いないでしょうか。あるいは三森先生もおいでになっていますので、三森先生いかがで しょうか。NTPでの成績はマウス、ラットで……。 ○三森委員 はい。ラット、マウスで実施しておりまして、相当高用量の投薬実験を行っておりま す。これらの成績では、発がん性を示唆するような所見は得られていないことから、こ の用量までは問題はない考えております。 ○戸部部会長 ありがとうございました。どうぞ。 ○三森委員 1つ質問をさせて下さい、この安全性の資料の4−4の2ページ目、白丸の3番目の ところですが、非常に低用量でビスフェノールAがエストロゲン様作用を示すという報 告があります。ほかの安全性のデータではほとんどが非常に高用量でのみ毒性が発現し ております。すなわち、従来の試験方法を用いた場合、ほとんどの毒性変化は非常に高 い用量においてのみ発現しているということです。 問題は、このインビトロの系で非常に低い用量においてもそのエストロゲン様作用が 起こっているというところかと思います。文献を全ては読んでいないため定かでありま せんが、どのくらいの用量までこの試験管内ではエストロゲン様作用が起こっているの でしょうか。事務局、あるいは既に臨時委員の方でお読みになった方がいらっしゃった らお教えいただきたいんですが。 ○戸部部会長 いかがでしょうか。どなたかこの方面のことで。 ○井上委員 今の御質問は、ビスフェノールAについてですか。ビスフェノールAだとマイナス6 乗程度だというふうに、お調べになっているデータでは大体値が出されています。 それから、今お話のあった低用量のところで変化が出るという点についてなんですが どの程度一般論にしていいかは分かりませんけれども、エストロゲンディスラプターと か、エンドクラインディスラプターという性質の物質というのは、勿論レセプターを介 さないものもあるんですけれども、多くの場合レセプター、受容体を介した作用をして おります。したがいまして、そのレセプターとのモレキュール対応でいきますので、イ ンビトロの方に持っていきますと限りなく低用量のところでシグナルを動かせばそれな りの反応をディテクトできる系を使えばディテクトできるというふうに理屈の上ではな りますので、どこまでも下がっていきます。 それで、それが実際にインビボのエンドポイントで影響を与えるかどうかということ が今、一つの課題になっておりまして、これは当然インビボの方は不連続でもって出て きますのでスレッショールドが出てくるということになる訳ですけれども、それがどの くらいの量的な対応関係になっているのかというのが研究課題になっているというふう に心得ております。 先生、いかがですか。 ○井口委員 補足の前に、今ごらんになっている資料の酵母の下のところですね。MCF−7、ヒ ト乳がん細胞というパラグラフの一番下のところに精巣重量の増加、これは前立腺とい うふうに訂正されたんですけれども、これでは何のことか分からないので、これはその 次のページの英国保健省の食品・消費者製品の2)のところですね。そこに書いてある生 後、生まれて6か月目の雄のというところがここに入った方がいいですね。同じことを 指しているんですけれども、これでは余りにも……。 それから、今の井上先生のお話の続きですが、今アメリカの方ではこういう研究をし ているフォンサールたちはロードーズエフェクトを見ようと、インビボでやりますと不 連続なんですけれども、ずっと下げていったときにもう一回ぽんと反応が出るところが あって、それはエストロゲンレセプターを介した系で本当に説明出来るのかどうか分か らないんですけれども、こういうふうに現実的に前立腺の重量が上がると、これは女性 ホルモン作用として上がったのか、作用を受けていたものが今度は自分で出した男性ホ ルモンに対して反応性がぽんとそこだけ上がったのか分からないんですけれども、こう いうことをEDSTACの方では5月にもう一回やりましょうということで招集が掛か っておりますけれども、まだその結論には至っておりません。 ○戸部部会長 ありがとうございました。三森先生、よろしいですか。 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。 ○長尾委員 缶からの溶出の問題なんですが、缶詰の種類によって濃度が著しく違いますね。ここ に書いてあるマッシュルームとかアスパラガスとかというのはNDですが、例えば豆の 缶ですと22μg/缶でかなりの量が出ていますね。それは何でそのように違うんでしょう か。 ○河村委員 これは推測ですけれども、この場合、市販品を購入してきて測っているデータなもの ですから、缶をつくった国も、製造メーカーも違う訳です。それで、やはり粗悪なエポ キシが、エポキシからビスフェノールAが溶出するというのは、きちんと重合をされて いればそんなことはないんですけれども、十分な重合をされていない塗装をしてしまう と溶出しやすいということで、やはりそういうところで若干十分な重合ををされていな い安価な缶を用いた場合ではないかというふうに想像されます。 ○戸部部会長 中身の種類ではなくて、その缶を製造するときの製造工程での品質管理みたいなもの が影響しているかもしらぬということですね。 ○河村委員 はい。ここで出ているものに関してはということです。ここに出ているのはほとんど 水煮の野菜ということで、これは物によって、成分によってすごく差が出るというよう には考えられません。ただ、もっと違った食品ですと、食品の影響というものはでる可 能性はあるかと思います。 ○戸部部会長 ほかにはございませんでしょうか。どうぞ。 ○池上委員 私は妊娠期から授乳期にかけての生体影響ということにちょっと関心があるものです から関連で質問させていただきたいんですが、資料の4−13の要約をされている、この 妊娠マウスに投与した場合のデータが出ておりますけれども、これは授乳期での影響と いうものは考えられないんでしょうか。こういう前立腺への影響、ほかのものでは授乳 期に摂取することによる影響というものも観察されるエンドクリンもあるようですので このビスフェノールについてそういう影響があるのかないのか、御存知でしたら教えて いただきたいと思います。 ○戸部部会長 どなたか今の池上先生の御質問に何らかの示唆をお持ちの方はおいででしょうか。 ○井口委員 授乳期だけを対象にした実験というのはまだなされていないと思いますけれども、こ の実験自体が多分妊娠期から授乳期、それからこの実験自体、私は今うろ覚えなんです が、大体21日ぐらい……。 これは妊娠期だけですね。では、ビスフェノールに関しては妊娠期だけです。 ○池上委員 その場合、このビスフェノールという化合物は、もし妊娠期の母親がずっと継続的に 摂取している場合に、母乳の方に移行する可能性というのはあるんでしょうか。 ○戸部部会長 母乳中のビスフェノールを測定したというようなデータがあるでしょうか。 ○鈴木委員 データとしては私は見ていないんですけれども、こういったようなものの物理的な特 性からすると、乳汁中への移行というのは当然あり得ます。 それから、これはビスフェノールAそのもので繁殖期全般、つまりほ乳期もカバーし てやっているようなデータはないと思うんですけれども、いずれにしてもエストロゲン のレセプターとの結合力というのは確かに弱いんですよね。エストラジオールと比べる と大体2,000 分の1で、私の計算だと2,500 分の1ぐらいになるんですけれども、もと もと女性の体内にエストロゲンがある訳で、それが影響しない仕組みというのも実は体 の中にあるはずなんです。 それは一応セックスホルモンバインディンググロブリンというふうにマウスでは言わ れているし、それからラットではアンドロジェンバインディングプロティンというふう に言っているんですけれども、そういったようなものとくっ付いているために割と胎児 が守られているというようなことが言われていまして、実際はこのビスフェノールAが ステロイドのレセプターとどのぐらいの相互作用を生体の中でも起こしているかという ようなことについて、まだはっきり分かっていないんですよね。ですから、その辺のと ころは恐らく今どなたも答えられない話になっているんじゃないか。今後やらないとい けないことじゃないのかなというふうには思いますけれども。 ○戸部部会長 どうぞ。 ○中垣補佐 1点だけ追加させていただきたいんですが、資料の4−5の2ページ目をごらんいた だきますと下から3分の1程度のところ、1−A−4、アディショナルコメンツ、オー ラルRfDというところがございますが、これの4行目をごらんいただきますと2世代 繁殖試験というのがやられているようでございまして、ザ・オンリー・エフェクト・ シーン・イン・ツー・ゼネレーション・ビスフェノールA・フィーディング・スタデ ィーズのところですが、100ppmから9,000ppmまでやられたと記載されています。 それで、その2世代繁殖試験におきましては9,000ppmという一番上の用量でF0、最 初の世代の体重減少、あるいはF1世代の体重減少などが見られたというような記述が ございますので、そういういわゆる繁殖期あるいは授乳期を通した試験というのは、少 なくとも2世代繁殖試験としてラットではやられておるということです。 ただ、そこで先生がおっしゃったようなビスフェノールAの乳汁中の量等を測ったか というのはちょっと存じ上げません。 ○戸部部会長 恐らく乳汁中への分泌量とか、そういうことはもし分かっていなければ当然これから 研究対象になるというふうに思われますね。動物実験あるいはヒトでの調査でこういう 毒性があるということは一方ではかなり分かっておりますけれども、一方その暴露量と いうものも今のお話の中にございますように分かりつつある。そうすると、その暴露量 と現在分かっている毒性がどういう関係であるかということがヒトでの安全ということ に直結する訳でございますから、その辺で何か御意見ございませんでしょうか。どうぞ ○井上委員 今の池上先生の御質問との関連でちょっと整理しておきたいんですが、乳汁中のビス フェノールAが出てくる可能性はあるというふうに鈴木先生がおっしゃって、それはそ ういうことであろう。しかしながら、その量は恐らく非常に少ないであろう。脂溶性と いうことでもありませんし、非常に少ないであろう。それで、測れないのではないか。 そのくらいの微量であろう。 したがって、一般論としてはエンドクラインディスラプターとしてとらえたときにそ ういう移行量の多いものについてスペシフィックに試験をする必要というのは、理屈の 上では生まれてくると思うんですけれども、ビスフェノールAは特に先ほど井口先生も 言ったように、低用量のところの作用機序が注目されている物質ですので、世界中でこ れからも研究が進んでいくんですけれども、その中で乳汁に関するものが通常の溶出レ ベルで実際に行われるかどうかは分からないと思っております。 ○戸部部会長 いかがでしょうか。毒性と暴露量との関係ですが、あるいはまだそういうことをここ で議論するには材料が整っていないという気もいたしますが、林先生いかがでしょうか ○林委員 その前にちょっとお伺いしたいことは、先ほどエストラジオールと比べてビスフェ ノールAのエストロゲンレセプターへの結合能は2,000 分の1程度と弱いということな んですけれども、エストロゲンレセプターというのは何種類かあるということを聞いて おりますが、現在知られているすべての種類のレセプターについてそうだということな んでしょうか。あるいは、何か特定の普通のエスラジオールについての検定系で使って いるレセプターについてということなんでしょうか。 ○井口委員 通常はエストロゲンのαレセプターですね。 ○林委員 αについて2,000 分の1と。それで、ほかについてはまだ分かっていないということ ですか。 ○井口委員 αであると限定している訳ではありませんけれども、今までは常識的にはαしか考え られていませんでした。 ○井上委員 そういうことでして、殊にβ受容体についてはとれたばかりです。 しかしながら、それにもかかわらずEPAではそのβ受容体についても測っていこう という方針を出しておりまして、いずれそういう対応を多くの方々がとっていくことに なるんだろうと思っています。そういう状態ですので、文字どおり測定法についてもア ップ・ツー・デートなやり方ということです。 それからあとは、受容体の反応様式などにつきましてもドメインが2つありまして、 どういうふうな使い方をしているのかというふうなことも大分調べられるようになって きていまして、単純に1つ受容体があるからそれにばんとぶつかるというふうな形でい っていないということが、殊にビスフェノールAでは一部の方々のデータで分かってき ておりまして、そういう意味でもまた特殊な生物反応様式をとるということが考えられ まして、事実ビスフェノールAはエストロゲン様の作用をするだけではなくて、むしろ それのアゴニストのような形で反応するようなことも、まだインプレスの状態ですけれ ども出てきております。非常に複雑だということをちょっと御説明したいと思います。 ○林委員 例えばDESの場合ですね。これも、やはりもしトキシティティーということを考え れば動物実験ではかなり高いドーズで起こる。エストロジェニックなエフェクトは別と してですね。 ところが、これが先ほど中垣さんの紹介にありましたヒトでの腟がんのことになりま すと、これは本当の母親が投与されて、その子どもにということですね。そうすると、 濃度としては非常に低くなる訳ですね。それで、明らかに非常に例数は少ないですけれ どもそういうことが起こっているとしますと、やはり何か通常のドーズレスポンスとい うのと違った意味なんですね。ですから、いわゆる従来のほかの物質のドーズレスポン スとちょっと考えを変えなければいけない。 その一つの理由は、やはりドーズレスポンスを見るというときはやはりメカニスティ ックに共通でやるとか、あるいはターゲットサイトが同じであるとかというようなこと について初めてドーズレスポンスでの比較が出来る訳ですけれども、これについて今ま でのお話ですと、2,000 分の1というのはいわゆるエストロゲンのレセプターのαに対 する特定の作用である。もしビスフェノールAの作用が同じようなものであるとすれば そういうことは言える訳ですけれども、全然別だとすると必ずしもいきなり動物実験の ドーズレスポンスとヒトでの何か疑わしい作用のドーズレスポンスというのは当然違っ てくると思いますので、そういう考え方を変える必要があるかなと思います。 ○戸部部会長 よろしゅうございましょうか。 まだ議論が尽きないかと思いますが、時間と、それから本日議題になっております量 との関係もございますので、ビスフェノールAについてはこのくらいで一応打ち切らせ ていただいて、次のスチレンに移らせていただきたいと思いますが、よろしゅうござい ましょうか。 では、説明をどうぞ。 ○中垣補佐 それでば、ポリスチレンについて資料の5を先ほどと同様な形で説明させていただき ますが、先ほどお断り申し上げましたとおり、ミス等がありましたら是非指摘をいただ きたいと思っております。 まずポリスチレンの使用量、基準等についてでございますけれども、ポリスチレンは スチレンモノマーを重合させたものでございまして、その構造式は資料5−12をごらん いただきますと1ページから9ページまでございまして、9ページの次にFig1がご ざいまして、Fig1にその構造式が載っておりますので御参考になるかと思います。 その食品用途への使用量でございますが、ポリオレフィン等衛生協議会の調べにより ますと、食品用途への年間の使用量は約4万tというふうに聞いております。発泡スチ ロールも勿論この中に含まれております。食品用途以外では家電製品あるいは建材等に 使われておると聞いています。 また、食品衛生法に基づく規格基準でございますが、昭和54年の6月に制定されてお りまして、その基準値を比較するというのは試験方法が必ずしも同じではありませんの でなかなか難しいところがございますが、大ざっぱに比較しますとこういう形になって おりまして、材質中の揮発性物質が日本では一般の容器で5,000ppm、発泡ポリスチレン で、特に熱湯を用いるものについてはこのような米印の1に書いたような形になってお ります。また、EU、米国についてもここに書いてあるとおりでございます。 2ページでございますが、抽出液の蒸発残留物、溶出物に当たるんだろうと思います けれども、これに対する規制がこのような形になっておりますが、御訂正願いたいのは 日本の30ppm のところに米印の3というのがありますが、これを消してください。それ に伴って、その注の米印の3というのも消していただくようお願い申し上げます。 安全性に関する資料でございますけれども、文献として入手出来たものを挙げており ますが、最初がWHOが持っております国際がん研究機関、IARCにおきます評価で ございます。評価は、まずヒトにおいてはその証拠は不適切である。実験動物において はマウスとラットの経口投与、胃に挿管投与した試験、あるいはラットの吸入の試験が 評価されておりまして、具体的に申し上げますと、例えば、胃に挿管して投与した試験 におきましては雄のマウスの肺、あるいは雌のマウスの肝臓に腫瘍が見られておるとい うようなデータがあるかと思いますが、リミテッド・エビデンスというふうに評価がさ れております。 最終的に、総合評価として、グループ2Bでございまして、2Bというのはポッシブ リー・カルシノゲニックということで、2Aがプロバブルでございますからその可能性 は高くはないんだろうというふうに評価されております。 その次がハンチントンで95年にやられた試験でございますけれども、2年間のここで やった試験においては発がん性は見られていない。 その次の試験が、これは1972年というかなり旧いものでございまして、ロシアで幾つ かの文献が出ているんですが、いずれもロシア語で、全くこれは読めないので翻訳しか 私も読んでいないんですけれども、発情周期の延長が見られたというようなデータがあ ります。 その次のものがダウケミカルがやった試験でございますが、ポリスチレン製造の副産 物、ダイマーが0.94、約1%弱、トリマーが約70%入っているということでございます けれども、これを22日令の雌ラットに1回だけ腹腔内に投与したところ、最高用量であ る1,000mg/Kgで腟開口の早期化が認められた。100 から300mg/Kgでは何も認められなか ったということでございます。 その下の資料がスチレンの4量体を主成分とすると言われているんですけれども、低 分子のポリスチレンを用いて雌ラットに4日間混餌で投与した。その結果、最高投与量 の760ppmで子宮重量の増加が認められた。80ppm 以下では何も見られておりません。そ れをDESと比べると2万分の1ぐらいの強さだというふうに評価がされております。 3ページでございますが、先ほどと同じようにMCF−7を用いて増殖能を指標にエ ストロゲン作用を調べた試験では、スチレンモノマーにエストロゲン作用はないという ふうに評価されております。 その次のデータ、文献でございますが、これがコルボーンほかが報告しておる訳でご ざいますけれども、「スチレンズ」という表現を使って生殖機能への影響及び内分泌か く乱を有するということが報告されておりまして、その報告で3つの文献が引用されて おります。「スチレンズ」には恐らくモノマー、ダイマー、あるいはトリマー等が含ま れるものだと考えられますが、コルボーンが引用した3つの文献のうち1つの文献とい うのは、スチレンに触れていないと聞いております。それで、残りの2報がその次の資 料及びその次の次の資料でございますので、そちらを御報告申し上げます。 1つがグラスファイバー強化ボート等の工場で働く女性工場労働者30人、平均28.6歳 6.2 年勤務、130ppmが大気中にあるということで、この130ppmというのはアメリカの労 働衛生協会勧告が50ppm とこのレポートの中に書いてありますのでかなり高い濃度だろ うと思いますけれども、そういう暴露をした女性工場労働者の血清中プロラクチン濃度 は対象の2倍であった、あるいはスチレン代謝物の尿への排出と相関があった、あるい は、成長ホルモン濃度が高かったとする文献、イタリアのグループの文献でございます その次も同じグループの文献でございまして、こちらもスチレンを暴露している女性 労働者、24.4歳、5年ということまでは出ておりますが、何ppm というのは文献中、少 なくとも私は見つけておりません。それで、TRHをまず注射して反応して出てくる血 清中プロラクチン濃度を調べた。その結果、血清中のプロラクチン濃度が10分から45分 まで参照値、コントロールの平均+3SDでございますが、これに比べて高かったとい うものでございまして、90分後には有意差はなくなっております。 最後の文献が、ポリスチレンの溶出物についてインビトロ、インビボの試験をしたと いうことでございますけれども、残念ながらこれは文献あるいは具体的な報告が入手出 来ておりませんので省略いたします。 3が暴露に関してでございますけれども、まずエンサイクロペディア、辞書に当たる ようなものを見ますと、ポリスチレンの材質の中には製法が大きくわけて2つあるよう でございますけれども、スチレンモノマー、あるいはダイマー、トリマー等が材質中に は存在するということが83年の文献の中に入っております。 4ページでございますが、これも先ほどと同じように国立医薬品食品衛生研究所の山 田部長あるいは河村先生がやられた試験結果でございますけれども、ポリスチレン製品 に頻出する未知物質群のうち13物質について構造を確定あるいは推定されております。 その13物質というのはダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマーなどでございます その次の文献も、同じ河村先生ほかを中心とするグループの試験でございますが、ポ リスチレン製品、カップ、弁当用パック、カップラーメンなどでございますけれども、 これからこれの中に入っているスチレンダイマー、トリマーをシクロヘキサンと2−プ ロパノールの混液で抽出して定量しております。これは材質の中に入っておるというこ とでございますが、そのうち25検体のすべてからダイマーあるいはトリマーがここに書 いてあるような量で検出されております。 「また」のパラグラフでございますが、こちらは溶出でございまして、先ほどが材質 今度が溶出という違いでございますが、溶出の有無を調べたところ、溶媒の脂溶性が高 いほど、その量は多い。水ではダイマー、トリマーとも不検出、エタノールではダイ マーは不検出、トリマーは0.01から0.14μg/cm2、「n−ヘプタンではダイマーが」の 後でございますが、ここはまた訂正をいただきたいんですが、「ダイマーは不検出から 0.86、トリマーが」までをここに入れていただく。トリマーが0.38から43.9μg/cm2で ございます。 その次の報告はかなり古い77年の文献でございまして、そういう意味から申し上げま すとダイマー、トリマー等について触れておる訳ではございません。 また、その次の馬場先生たちの報告もモノマーについては測定しておりますが、ダイ マー、トリマー等については報告はございません。 その一番下の文献が民間試験研究機関でやられたものでございまして、ポリスチレン 製品1検体でございますが、水、酢酸、エタノール、いずれも90度30分で溶出するダイ マーが測定されております。それで、その結果としてすべて0.01mg/L未満であった。た だし、50%のエタノール水溶液を用いた場合にはダイマーが0.4 、トリマーが2.5 mg/L だったというような文献でございます。 5ページでございますが、5ページの最初の文献はちょっと趣旨が違っておりまして 食品中の自然に入っておるスチレン含量を測定した。これはスチレンのモノマーだろう と思いますけれども、その結果、ngで書くのは余り自然じゃないような気がしますけ れども、シナモンでは3万9,200 ng/g、シナモンを除いて小麦、ピーナツ等についても 数ng/g程度検出されております。 最後の文献が、先ほど御紹介した日本子孫基金の文献でございますけれども、カップ ラーメン容器12品目について沸騰水200 mlを加えアルミ箔でふたをして検査をした。そ の結果、水中のスチレン、これはモノマーだと思いますが、1から33ppb という報告が あります。以上でございます。 ○戸部部会長 ありがとうございました。それでは、ポリスチレンについて審議をいただきたいと思 います。どうぞ、御発言を自由に。 ここでも分析を河村先生、山田先生のグループでおやりになっていますが、河村先生 何か御発言ございませんでしょうか。 ○河村委員 今どういうことを期待して私の方に御質問していただいたのかよく分かりませんけれ ども、ダイマーとトリマーについて何か話せということかなと思うんですが、ダイマー トリマーにつきましては文献的にもなかなか見つからなくて、私の方で検索しましたと ころでは食品用のプラスチック容器から検出したという報告がほとんどなかったもので すから慌てて報告させていただいているんですけれども、どうしても製品中にある程度 の量は入ってくるもののようですが、溶出についてはもう少し検討しなくちゃいけない なというふうに今、考えております。 ○戸部部会長 ありがとうございました。安全性について、どなたか御発言ございませんでしょうか マウスの実験で御紹介がありましたが、肺の腫瘍と、それから肝の腺腫がということ ですが、ラットでは発がん性がなかったというふうに読み取れるかと思いますがいかが でしょうか。それと、データの信憑性については多少疑念があろうかと思いますが、ヒ トでの増血系への影響みたいなものが一方で報告がある訳ですけれども、これを含めて どなたか御発言いただくとよろしいかと思いますが、どうでしょうか。 ○林委員 発がん性のことですけれども、これはやはりマウスの場合の肺と、それから肝臓です か、これもやはりスポンティーニアスな自然発生の腫瘍の増加ということで、これは発 がん性とは切り離していいんじゃないかと思っています。 それで、実はスチレンモノマー、今ここでIARCの分類が出ていますね。それで、 最近ドイツからまた新しい分類を提案しようとしているんです。その中で、通常の分類 は4つですけれども、ドイツから提案しようとしている物質の中に5というのがあるん です。それは非常に遺伝子障害性、ミュータジェネスティーがあって、確かに動物実験 で発がん性があるというデータがあるんだけれども、そうしますと遺伝子障害性が影響 しているんじゃないかというふうにとられますね。その場合でも、もし遺伝子障害性が 非常に少なくて弱い場合、それで実際にヒトへのエクスポージャーが非常に低い場合に は、これは余り問題ではないんじゃないかというようなたぐいの物質とか、カテゴリー の発がん性のある物質でカテゴリーの5というのをつくろうとしているんです。 それで、今度それがIARCにも載っかるということですし、多分今年の4月か5月 にアメリカの雑誌に公開される予定ですけれども、そのときにドイツが念頭に置いてい る物質がこのスチレンモノマーなんですね。そういうことで、今までは動物実験をずっ とやりまして、それからまだドイツの提案を見ましても発がんの方は余り問題じゃない かなと思っておりました。 それでちょっとお伺いしたいのは、これは井上先生にお伺いしたらいいのかどうかよ く分かりませんけれども、先ほどのビスフェノールAの場合には明らかに何かエストロ ゲンライクの作用があったと。それで、今の場合、これは全然ホルモンの作用がないと いうようなデータも随分ありますし、何か問題の焦点がどこにあるのかということが分 からないので、発がんの中でもちょっと触れていますけれども、これも大したことはな いとか、今フォーカスというか、どれを焦点に持っている訳ですか。先ほどのコルボー ンの文献というか、それが問題になっている訳でしょうか。どこに問題があるのか、ち ょっと私は分からないもので教えてください。 ○中垣補佐 先生御指摘のとおり、この資料の5の3ページの2つ目の丸、コルボーンのこの文献 であろうというふうに考えております。したがいまして、もっと詳しく申し上げますと 丸の3番目と4番目の高い濃度の暴露を受けた女性工場労働者、これらの方々のもので あろうかと思います。 ○戸部部会長 今の問題ですが、これまでいわゆる内分泌かく乱物質と思われるもの、具体名がかな り挙がっておりますが、スチレンそのものの名前が出ているというふうに見えませんが どうでしょうか。 ビスフェノールとか、フタレートなどはそういう点では有名でございますが、このス チレンについては現在どういう評価をされているかということですが。 ○井口委員 コルボーンさんのリストに載っているというのが一つの根拠なんですけれども、内分 泌かく乱といったとき、あるいはエンドクラインディスラプターという定義自体がイ コールエストロジェニックという、エストロジェン様の働きということではない訳です ね。 しかし、研究方向としては女性ホルモンに働くものをいかに検出するか。それはEP Aも、それからOECDも大体そういう方向で研究の方は向いている。それで、このス チレンに関してはここに引用されているものは恐らくドパミンが下がるということです ね。ですから、神経伝達方式の一つでもありますし、ドパミンが下がればプロラクチン は上がる。トパミンがプロラクチンのブロッカーになっていますから、それでいきます とやはり脳下垂体系のホルモンのかく乱になります。ですから、内分泌かく乱というふ うにとらえればいいので、それをすぐ女性ホルモン作用というふうにとらえると、これ は女性ホルモン作用ではなさそうだ。 ただ、ここに一つありますね。マウスの子宮が若干重量が増加したということで、こ れは私はよく分からないんですが、とらえ方は内分泌かく乱化学物質イコール女性ホル モン作用ということではないので、これも範疇に入るかと思います。 ○戸部部会長 どうぞ。 ○鈴木委員 今の井口先生の説明に若干加えますけれども、乳がんの細胞の実験などからすると、 いわゆるエストロゲンレセプターと一緒になるというか、くっつくというようなことは ないんだけれども、やはり全体として見るとエストロゲン作用があるように見える。そ れで、その場合のところというのが、今のドパミンの話が中枢性に効くということなん ですけれども、カテコラミンというふうに称されている一般のドパミンなどが属する神 経伝達物質のところで、私がやった実験ではこの物質ではないんですけれども、5HT と言われている部分のレセプターなどが卵巣レベルでステロイドホルモンの代謝を調節 している部分があるんです。そうすると、この辺のところについてはレセプターを介す る機序ではないけれども、カテコラミンを介する機序で中枢性もしくは末梢性にステロ イド代謝の影響がかく乱される可能性が今後出てくるんじゃないでしょうかというふう には思っています。 ただ、どのくらい強いのか、弱いのかとかというようなところになってきますと、こ こで提出されているデータを見ても、大体1回投与で性周期が1日ぐらいずれるとか、 そういったようなところなので、よく分からないなというふうに思っているんですが。 ○戸部部会長 ありがとうございました。林先生、どうぞ。 ○林委員 ドパミンを下げてプロラクチンを上げるという、これは非常に考えやすいですね。 ただ、こういう作用というのはラットでは非常に敏感に起こりますね。 ところが、いろいろな実験をやっておりますけれどもラットでも全くそういうことが 起こっていないということで、先ほど非常に単純ではないということを御説明いただい たんですけれども、こういう話だけでも何か非常に複雑だということで分からないこと が多いんじゃないか。本当にドーパミンを下げるということだけでもって説明出来れば 非常にこれはよろしいんですけれども、なかなかひとすじ縄ではいかないという感じを 受けました。 ○戸部部会長 ありがとうございました。福島先生、どうぞ。 ○福島委員 今の林先生の御説明をちょっと引き継いでですけれども、実はラットにおいてプロラ クチンが乳がん発生のプロモーターというようなことで、これはラットだけの話なんで すが、そう解釈されています。 それで、今の話でドパミンが下がり、プロラクチンが上昇するということから見ます と、この発がん性はどうかということなんですが、先ほどのハンチントンのデータなん ですが、発がん性はなかったというところの資料の5−2の13ページのコンクルージョ ンですか、そこのところにわざわざ、乳腺の腺がんはむしろ減少しているというような ことを言っているんですね。ですから、これはなかなか複雑だなというように思われま す。 ○戸部部会長 ありがとうございました。長尾先生、お待たせしました。 ○長尾委員 4ページの上から3番目の丸のところですが、総揮発成分が2,000ppm以下ということ なんですが、これはスチレンでは説明出来ないので、それは一体どういうものなんです か。 ○戸部部会長 都立の衛研などの仕事ですが、河村先生いかがですか。 ○河村委員 十分に質問の意味を理解したかどうか分からないんですけれども、総揮発成分という 場合にはスチレンのモノマーとエチルベンゼンとトルエンと、たしか5種類ぐらいの揮 発性物質、溶媒として使うもの、それを合わせたものを総揮発性物質と呼んでおります そういったものを測った場合には2,000ppm以下だったと、これはもっとはるかに低い数 字だったと思いますけれども、規格に合っているかどうかということで2,000ppm以下と いう表現をしているんだと思います。 ○戸部部会長 そのうちどのくらいがスチレンモノマーかというようなことは分かりませんね。 ○河村委員 うちの方でやったデータ等を考えますと、数百ppmくらいあったというふうに記憶して いますけれども。 ○戸部部会長 ほかに、どうぞ。 ○中垣補佐 今スチレンモノマーという質問が出ましたので、この資料の5−14の179ページの表の 3にスチレンモノマーの数字が出ております。 ただ、この資料自体は1977年の文献でございまして、規格、基準が出来る前の文献で ございますので、その点は規格が出来る前の試料を測ったものだということで御承知お き願いたいと思います。 ○戸部部会長 どうぞ。 ○池上委員 スチレンについて1つ質問させていただきたいんですけれども、そのエンドクリンの 作用の一つとして甲状腺ホルモンに対する影響というようなものはこのスチレンモノ マーでは見られないんでしょうか。エンドクリンの中にはそういう作用をスペシフィッ クに持つものが幾つかあるようなんですが、ちょっとこのリストの中にはそれに該当す るようなものがないんですが、その辺の知見というのはあるのかどうか。 ○井上委員 データ上は甲状腺の影響は観察されていないんですけれども、ただ、出る可能性はあ るんですね。チトクロムP−450 のサブタイプを動かしていますので、実質的には出る 可能性はあると思うんですけれども、ここで報告されている内容に関してはないようで す。 それから、それとの関係で先ほどの発がん性の問題も実際には観察されていなくて、 量的なこととの関係で大きな問題にはならないのではないかというふうに考えていたん ですけれども。 それから、あとは今お話のあった甲状腺との関係をどういうふうに整理するかという ことなんですけれども、これは幾つかの考え方がありまして、例えば今、井口先生がお っしゃったようにエンドクラインディスラプションということを全体でもって考えたと きに、それは紛れもなくエンドクラインの影響ですし、一方で化学物質の中でチトクロ ムP−450 などを動かすようなものはどうしても甲状腺だとか、ほかの組織に影響を与 えますので、プラクティカルにどういうふうにこれから考えていくかという点について は議論が分かれております。それで、そのことは最初のときの議論で申し上げたように エンドポイントをどこに置くのかということとも関連しています。 ただ、EPAのように甲状腺をとにかく第3のホルモンとして重視していく必要があ るという考え方はありまして、それのエンドポイントとの関係はこれからいろいろな化 学物質で詰めていこうということになっております。 ○三森委員 今の甲状腺への影響についてですが、今回提出されたデータの中にはラットの長期癌 原性試験があります。もし、本物質が甲状腺に影響を及ぼすならば、ラットは甲状腺に 対する作用を拾いやすいため、何らかの変化がみられるはずです。しかし、吸入毒性試 験で1,000ppmの投与においても、そのような影響は発現しておりませんので、実験動物 データからは、甲状腺に対する危惧感はほとんどないと考えていいと思います。 第2相肝薬物代謝酵素のUDP−GT活性が上昇する所見が得られれば、二次的にT 4、T3が落ちてくる可能性があると思いますが、このスチレンに関してはそういうこ とはないと思います。 ○戸部部会長 ありがとうございました。 時間が少し足りないかと思います。それで、もう一点このスチレンについても先ほど ちょっとお願いした暴露量とその安全性ということの相関みたいなことでどなたか御発 言をいただけないでしょうか。これも先ほど林先生のおっしゃったようにかなり難しい 問題を含んでいるかと思いますが、林先生いかがですか。 ○林委員 ヒトの場合も動物の場合も作用機序とかターゲット、あるいはエンドポイントが同じ であると仮定すれば、これはヒトでのエクスポージャーなレベルというのは非常に低い ですから問題はないと思うんですけれども、ただ、ヒトで見ているものと動物で見てい るものとのエンドポイントは違うんだということになりますと、これは話が違いますの で、同じと考えれば問題はない。違うものだと考えれば、また考え方も変えなきゃいけ ないと、そういうことだと思います。 ○戸部部会長 内分泌かく乱という面から見ても、このものについては今のお話がございましたよう にまだ不確定といいますか、これから解明されるべき点がやや多いかというふうに思わ れますが、今後の研究の推移を見守るということになろうかと思いますが、よろしゅう ございましょうか。 それではもう一点、ポリ塩化ビニルの問題がございますのでどうぞ。 ○中垣補佐 それでは、資料6に基づきまして先ほどと同じ形で御説明申し上げます。 1の(1)のポリ塩化ビニルでございますが、塩化ビニルモノマーを重合させたもの だというのは言うまでもないことだと思っております。 その食品用途への使用量でございますが、塩ビ衛生協議会の調べによりますと、食品 用途へ11万t、このうち可塑剤としてフタル酸ジエチルヘキシル、DEHPと言われて おりますが、このDEHPを使っているものが4万t、それ以外のフタル酸エステル、 この場合にはフタル酸エステルという形で問題になっておりますけれども、私どもが聞 いておりますのは、輸入はほとんどございませんので、我が国で使っておるのは食品用 途へはフタル酸ジエチルヘキシル、DEHPがほとんどであるというふうに聞いており ます。 なお、このDEHPの構造式につきましては本日お手元に配布させていただきました 資料6−15の追加というのを開いていただきますと、ここにはDOPと載っております けれども、これと同じものであるということで御了承願いたいと思います。 また、おもちゃの関係が実はございまして、おもちゃで一番問題になるのは歯固め、 あるいはおしゃぶりかと思いますけれども、玩具協会の調べによりますと、1社を除き ポリ塩化ビニルというのは用いられていないというふうに聞いております。 次に食品衛生法の規格基準でございますが、昭和48年7月に基準が定められておりま す。これも先ほどと同様に、基準値等を日米欧で比較するというのはなかなか大変な仕 事なのでございますが、基準値だけを単純に比較するとここに書いてありますような データになります。 2ページでございますが、アメリカの規制の中では使用量の限度が設けられたもの、 あるいはEUは1994年にフタル酸エステル等を個別物質ごとの移行量、溶出量の限度値 の案を示しておりますが、いまだ決定は見ていないというふうに聞いております。 次の安全性に関する資料でございますが、IPCSと申し上げてWHO等が中心にな りました国際化学物質安全性計画というところから物性、ヒト・環境の暴露、体内動態 動物試験結果、ヒトの疫学調査の結果を総まとめにした報告が出ております。資料6− 1としてお配りさせていただいたものはその翻訳版でございますが、当然英文で出てお るということでございます。 ここの概要のところを要約したものを持ってきたものでございますけれども、まず環 境中に非常に広く見られるということでございます。 次に、実験動物の中での試験では10gから20g/kgでございますからかなりの量になる んだろうと思いますが、精巣萎縮が見られておる。その萎縮は可逆性であるということ が述べられております。 また、混餌で0.5 から2g/Kgというかなりの量になるのですが、ここでマウスに奇形 が見られておるということでございます。 変異原性は陰性ということで、ただ長期の投与試験でペルオキシゾーム増殖に基づく というふうに書いてありますが、発がん性が見られておる。総合して見るとペルオキシ ゾームというのは動物間に著しい差があることから、人間に対して発がん性というよう な重大な問題にならないんじゃないかというようなことが述べられております。 次の文献は、一般薬理について調べた文献でございます。 その次の文献は、ジオクチルフタレートとスチレンの混合物の実験でございまして、こ れについて免疫への影響が混合物ではありますが若干あるというものがあります。 その次がDEHPの神経毒性でございまして、神経毒性は見られなかったとあります 2ページの一番下の文献でございますけれども、DEHPを混餌2g/Kgでございます が、その実験で性周期の延長、排卵障害、血清中エストラジオールの低下等が見られた ということでございます。 3ページでございますが、これはまず訂正してほしいんですが、1行目の括弧内の 2,300 というのは2,800 mg/kgの間違いでございます。それで、3行目の10週令というの は1行目の15週令と同じでございまして15の間違いでございます。すなわち、4週令の ラットと15週令のラットを使って2,800mg/kg、10日間投与したところ、4週令では精細 管の萎縮あるいは前立腺の重量減少が見られたということでございます。ただし、15週 令では見られなかった。 その次が、DEHPを皮下に投与する。それで21日後、それを見たところ、10ml/kg 以上の投与群で妊娠率の低下、あるいは15から20ml/kgで精巣重量の低下が見られたと いうような実験でございます。 その次はDEHPの精巣毒性を見たものでございまして、1回投与でございますけれ ども700 mg/kg以上で活面小胞体の拡張が見られた。また、トリチウムラベルをして分 布を調べた実験では、精巣のセルトリ細胞のβ−アクチンの局在に影響しておるという ようなことが述べられております。 その次が霊長類のマーモセットを用いてやった試験でございますが、500mg/kgあるい は2,500 mg/kgで肝臓ミクロゾームへの影響、あるいはp−450 への影響が見られてお りますが、100mg/kgでは影響は見られておりません。 その次の文献は、オーストリアの国立毒性研究所が450 ぐらいの文献を総まとめして レビューをしたものでございまして、結果的にはラットの発がんのNOELを50から100 mg/kg、ペルオキシゾームの増殖に関するNOELを25mg/kgというふうに評価して、 暴露との関係も評価しておりますが、830 倍の開きが一般的にあるんじゃないかという ようなことを述べております。 その次が、ラットの中期肝発がん性試験と言われるプロモーションの作用の有無を調 べる試験だろうと思いますけれども、これが行われまして、3,000ppmと1万2,000ppmで 作用が見られております。300ppm以下では作用は見られておりません。 その次の文献は、MCF−7を用いてエストロゲンレセプターを介した転写活性能を 調べているんですけれども、フタル酸エステルの種類によって作用が当然違う訳でござ いますが、BBP、DBPには作用活性上昇が見られておるDEHPには見られなかっ たという報告でございます。 その次の文献でございますが、同じくMCF−7を用いて増殖能を調べ、その結果、 ここに書いてあるジブチルフタレート以下のものについては作用は見られなかった。た だ、上の6−9の資料と同じようにベンジルブチルフタレートについては作用が見られ た。その程度というのは、E2 を100 とした場合に0.0003であるということでございま す。 その次の文献、マウスペルオキシゾーム増殖活性レセプターと、ちょっとこれは私は なかなか理解出来ていないんですけれども、それでDEHPの代謝物については活性上 昇が見られた、DEHPそのものでは作用が見られなかったというようなものでござい ます。 その次のラットの子宮のエストロゲンレセプターを用いた試験でございますけれども この試験結果も欧米の試験結果とよく似ておろうかと思いますが、DBP、DOP、D INP、DIDP、DnOPでは影響は見られなかった。また、インビボでも試験が行 われまして、卵巣を摘出したラットで子宮重量あるいはプロゲステロン受容体の量を指 標、エンドポイントとして見られておりますが、その影響はいずれも見られておりませ ん。 6−15の資料は、先ほど申し上げました通産省の委託による資料の関係部分の抜粋で ございます。 暴露でございますが、暴露についてまず最初のはカナダの厚生省が試験をしてまとめ た資料でございます。260 検体及び98検体ですから合計約360 の検体を試験しておりま す。その結果として、DEHPが飲料で0.065 μg/g、食品で平均0.29μg/g、それ以 外のものもここに書いておりますようにジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレー ト等々が特にバター、マーガリンから検出された。あるいは、パイからジエチルフタ レートが検出されたというようなことが載っています。 その次の文献は、イギリスの農業漁業食品省の研究所がやった文献でございます。こ れはスペインというのがまず間違いでございましてすみません、ノルウェーの間違いで ございます。 ついでに、誤字脱字から直させていただきますが、3行目の0.05というのは0.55の間 違いでございます。すなわちノルウェーの原乳中の総フタル酸量はいろいろな段階で変 化はないけれども、ここに書いてあるように0.12から0.28mg/kgだと。それで、これは スペインから持ってきたものだと書いてありますが、リテールデイリープロダクト中の DEHPは「検出出来」ないから0.55mg/kg、クリーム中には若干高いというようなこ とが書かれております。 下から2番目の文献、これはおもちゃの文献でございまして、日本子孫基金の「食品 と暮らしの安全」から持ってきたんですが、歯固めが1品目、あとはソフトトイと呼ば れる動物の形をしたゾウであるとか、サルであるとか、そんなものだと書いてあります が、10種類の塩化ビニルのおもちゃのフタル酸エステルの含有量、これは先ほどから言 っている材質の中の量で溶出ではないというふうに考えていただければいいんですが、 それが検出された旨が記載されております。 最後がグリーンピースのレポートでございまして、世界17か国71種類の玩具でござい まして、このうち日本で購入されたのは4つございまして、飛行機、人形、ケーキ型玩 具となっておりますが、4つのものが日本で購入されておる。その中からフタル酸エス テルが検出されておるということでございます。これも、その材質の中の含有量を調べ たものだということでございます。以上でございます。 ○戸部部会長 ありがとうございました。どうぞ御発言をお願いいたします。 もう御承知のように、このDEHPについては非常に長い経緯がございまして、研究 も広範に行われている訳でございますが、何か御指摘ございますでしょうか。どうぞ。 ○三森委員 少し伺いたいことがあります。この資料の2ページ目の一番下の丸印の項に、DEH Pの混餌2g/kgを投薬しますと性周期の延長、排卵阻害、血清中のエストラジオールの 低下が見られたと記載されています。この文献は資料の6−12に相当します。これを見 ますとDEHP投与により卵巣に直接的な障害が発現し、それによって二次的にエスト ロゲンレベルが低下すると報告されています。 次の3ページ目の一番上の丸印の実験では、4週令と15週令のラットにDEHPが投 与されると精細管萎縮が起こると記載されています。この文献においては、セルトリー 細胞という精巣の精細管を支持する細胞をこのDEHPが直接的に障害して、その二次 的な作用としてテストステロンが低下するという実験結果が報告されています。今まで にこの部会で審議しました2品目に比べますと、この環境エストロゲン様物質は前二者 とは毒性学的意味合いが全然違うと思われます。すなわち、薬剤が高用量投与された時 のみ、卵巣あるいは精巣に障害が発現し、その結果として、二次的に内分泌のかく乱が 引き起こされたのが、DEHPの毒性と考えられます。これと、インビトロの系でずっ と下の用量までエストロゲン様作用が発現する、先ほどのビスフェノールAとはその毒 性発現は全然違うと考えるべきです。 また、このDEHPはペルオキシゾームプロリファレーターとして包括される物質の 一つであり、ラットに特異的に肝臓腫瘍が誘発されることが知られており、他の内分泌 かく乱物質の評価とは考え方を別にした方が良いのではないかと考えております。これ についてほかの先生方の御意見をお伺いしたいと思います。 ○戸部部会長 井上先生、いかがでしょうか。今の三森先生のお話でございますが。 ○井上委員 基本的にはそういうことだと思います。 ○戸部部会長 そうですね。三森先生、このものの変異原性は今のところポジティブなデータはない ということでよろしいでしょうか。 ○三森委員 変異原性はほとんどネガティブです。先程の精巣毒性についても、人間に近い霊長類 であるマーモセットを使った実験では精巣には毒性変化は起こらないことから、ペルオ キシゾームの増殖はげっ歯類に特異的に起こる変化と考えられます。 ○戸部部会長 発がん性については、先ほど紹介ございましたように、3ページの一番下に触れられ ている報告は恐らくかつておいでになった福島先生の教室でのお仕事かと思いますが、 福島先生何か御意見ございませんでしょうか。 ○福島委員 私が去ってからこの実験が行われておりますので、実際にどういう実験結果かという 詳しいことは分かりませんが、いずれにしても先ほど三森先生が言われましたように、 DEHPのラット肝に対する発がん性というものはラット特有な現象であろうというこ とで理解され、しかもそれがどうも細胞増殖と関連するのではないかという、要するに プロモーション作用に関連するものではないかということでこういう実験が行われたと 思うんです。 それから見ますと、確かにこの実験系で3,000 ppm 以上、特に1万2,000 ppm ですか 非常に高濃度においてのみ肝臓がんの発生の促進が認められたということで、このデー タからだけ見ましても、その発がん性というものに関しては現象としては確かにあった でしょうけれども、その作用は弱いものというふうに見ていいんじゃないだろうかと思 います。 ○戸部部会長 ありがとうございました。ほかにどうぞ。 ○寺尾委員 この実験系で、特に培養細胞を使っているMCF−7という乳がん細胞がございます ね。これにつきまして、これはよく使われるようですけれども、本当にこれのレセプ ターというのはネイティブのレセプターと全く同じなのかどうか、そこら辺の保証はち ゃんと出来ているんでしょうか。 つまり、そこが変わっていると全く事情が違うということがあるので、一番最初にそ こを調べないと余り比較にならないという気がするんですけれども。 ○井上委員 まず、一応これはエストロゲンのレセプターを持っている訳なんですけれども、それ のミューテーションがあるかどうか、どうなんですかね。ペーパーは出していないです かね。 ○寺尾委員 そこのところを注意して使わないと、幾らコントロールをおいてやりましても、結果 が違うという可能性が大いに考えられるというのは、培養細胞でいろいろレセプターと いうのは変異しているという点がありますので。 ○井上委員 リファレンスケミカルで比較した限りでは先生のおっしゃるとおり、これはヒトの乳 がん細胞ですから、そういうミューテーションを食らい込んでいる可能性というのは決 してない訳ではないと思うんですけれども、一応リファレンスケミカルで比較したとき の用量関係は観察されているということ。 それから、あとはPCRでこのレセプターを引っ掛けるんですけれども、それで特に シフトしているようなデータは我々は見ていないんです。(注:MCF−7のエストロ ジェン・レセプターには変異は認められない。但し、バリアントが数種類存在し、同じ クローンを使って実験することが必要である。) それから、このMCF−7と並行してヘップG2という肝臓がんの細胞が使われるん ですけれども、これはエストロゲンレセプターを持っておりませんで、これはわざわざ 入れて、そしてレポータージーンを入れて、それで見るんですけれども、それとの結果 は並行することが多いという形で、実験室の中ではインターナルコントロールはそうい うふうに見ているんです。 ただ、先生の御指摘は大事なんですね。ちょっと無知ですみませんけれど、ちゃんと 勉強してまた御報告をいたします。 ○戸部部会長 ありがとうございました。どうぞ。 ○林委員 先ほど三森先生が言われたことと私も全く同じような意見ですね。 ただ、これは例えばマウスのペルオキシゾーム増殖発生レセプター、PPARと書い てありますけれども、これはα、βと何種類かございますね。それで、この場合にはα なんですね。それで、そこにペルオキシゾームプロリフェレーションレセプターのαを 活性化させるということについては、これは種差はないですね。それで、活性化された ことによる影響ですね。これがラットのそういうペルオキシゾームが非常に増えて、何 かがんが起こるとかということで、ヒトとかほかの動物というのは全く別の方向に作用 するということでございますね。だから、そういう面で作用があるということでは非常 に似ているんですね。だから、それがどっちの方向にいくかということなんですね。 それから、先ほどの精巣の問題でも、実は精巣に毒性を与えるということを最初に見 つけたのは日本人なんですね。全然ここでは名前が出ていませんけれども、労働省の外 郭団体の研究所の方がもう70年代ぐらいですね。それで、それが発見されてから非常に いろいろな国がそれをやりました。重大な問題ですから、それでそのメカニズムを見る ということでもってこれのセルトリーセルが浮かび上がってきまして、ここにはβ−ア クチンと書いてありますけれども、最初のころβ−アクチンというよりも、むしろ細胞 のマイクロチュブルスの影響ということになったんですけれども、とにかくセルトリー 細胞に影響を与えて、それで二次的に精巣もやられるということは大体定説になってい るようなんですけれども、この食品医薬品安全センターはそれを更に掘り下げた実験で 非常にいい実験だと思います。 そういうことで直接に今までのほかの、例えばビスフェノールAとか、ああいうもの とは全く環境ホルモンと全体に何かこのバランスを壊す、ディスラプションするという ことでは似たようなものはあるかもしれませんけれども、作用機序、それからエンドポ イントとしては全然違うということ。 それで、動物とヒトとの場合ですけれども、作用するという面では似ている。それで 今の場合のPPARのαに作用したということは似ているんだけれども、その影響がど こに現れるかということに種差があるということなので、そこについてはまだ余りよく 調べられていないですね。ネズミについてだけよくやっているということで、評価につ いては随分まだこれからやらなければならないことが多いんじゃないかと思っておりま す。 ○戸部部会長 ありがとうございました。 会場の都合がございまして、恐縮ですがこの辺りで全体の審議は打ち切りにせざるを 得ないというふうに思います。 ただ、本日の事務局で用意された資料、あるいは本日の会場での先生方の御発言を伺 っていて、今日すぐ結論を出して厚生省が何かをやらなきゃならぬというような、それ ほど緊急性はないのではないかというふうに実は思うんです。また、急いでみても非常 に大きな問題を含んでおりますので、そんなに簡単に解決出来ない。冒頭にも申し上げ ましたけれども、単に厚生省だけの問題でなくて、あらゆる分野での協力がないと、こ の大きな地球規模の問題というのは片付いていかないとふうに私は思います。 したがって、今回だけの会議で何か結論を出そうというふうには最初から実は考えて いない訳でございます。今後どうしたらいいかということでございますが、先生方から 御意見を伺って、今後の対応を考えていくのが筋でございますけれども、申し上げまし たように時間の制限もございますので、一応こちらである程度の案がつくってございま す。その案の幾つかを御紹介いたしますと、いずれにしても最初に御紹介がありました ように、米国の環境保護庁の現在の見解というのは、全体のこの問題についての見解を かなり的確にとらえているのではないかというふうに思うんです。 つまり、どういう問題が起きているかということを科学的にもう少しはっきりさせな いと具合が悪い。そういう科学的な知見に基づいて対応していかなくてはいけない。 しかし、現在の段階ではその知見が十分でないというのがまず1点あろうかと思いま す。 それから、今日専門の方にもおいでいただいているこの現在の、今日は3つ材料 として取り上げた訳ですが、実際に我々が使っている容器、包装から出てくる量という ものがある程度データが出てきている。 しかし、そのデータが直接大きな危険、あるいは緊急に問題視しなければならないよ うな量にはまだなっていないのではないかというふうに窺ってよろしいかと思うんです ね。 それから3つ目として、内分泌かく乱作用というのが井上先生、井口先生からも お話ございましたけれども、まだそのメカニズムが必ずしも十分分かっていないですし あるいはまだまだ検討すべき問題がたくさん残っているというふうに思われます。 それから、最初に申し上げましたように、ここは食品衛生調査会ですから、食品だけ の問題ではなくて環境一般の大きな問題、殊にDDTとか、あるいはPCBとかという かく乱物質の中でもかなり影響の強いような物質については、御承知のように我が国で はもう15年ほど前に禁止している訳でございますから、そういうことも含めて厚生省の この食品衛生調査会だけが対応すべき範囲を超えている大きな問題があるということで あります。 それから最後にもう一つ、米国を始めとして国際機関も今後の動向を現在模索してい るというとちょっと語弊がありますが、進展を図ってこの問題に対処していこうという ことであります。したがって、その動向を見定める。情報を早く的確につかんで、その 対応をたてていく。 以上申し上げた数点ございますが、これが現在置かれている内分泌かく乱物質に対す る今日の認識という形にまとめさせていただき、、お忙しい先生方でございますけれど も、問題は大きいので、御都合のいいときに更にお集まりいただいて議論を進める、あ るいは対応を検討していくということで今日の会は終わらせていただきたいと思います が、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。今日だけの問題ではな い訳で、大きい問題でございます。皆さんもそういうふうにお思いだと思いますので、 そういうふうにさせていただいてよろしゅうございますか。 ○戸部部会長 それでは、よろしいですか。何かここでおっしゃるという方はございませんでしょう か。 ○戸部部会長 それぞれの分野で、厚生省は勿論当局でございますので、いろいろな情報を集める訳 でございますが、それぞれの専門の分野で、この問題について情報が入手出来たときに は是非事務局の方にお寄せいただきたい、御協力いただきたいというふうに思います。 よろしくお願いします。どうぞ。 ○成田委員 塩ビの可塑剤としてフタル酸エステル類はおもちゃではすごく多く入っているように 見受けたんですけれども、食器などにもこういうパーセントオーダーで入っているんで しょうか。 ○中垣補佐 手元に正確なデータを持っておりませんが、材質の中ということでいけばパーセント オーダーは超えていると思います。 ○成田委員 ありがとうございました。 ○戸部部会長 それでは、課長どうぞ。 ○黒川食品化学課長 本日は変則的な時間にもかかわらず、各委員の先生方、大変御熱心に御討議をいただ きまして誠にありがとうございました。 また、特に2人の委員の先生には本日成田に着いたばかりで、本当にお力添えありが とうございます。オブザーバーの方、本当にありがとうございます。 また、本日傍聴に来られました皆様方におかれましては、円滑な御審議に格別の御理 解と御協力を賜りまして誠にありがとうございます。どうもありがとうございました。 ○戸部部会長 ありがとうございました。 問い合わせ先 生活衛生局 食品科学課 中垣・田中(内2483) |