97/09/30 第1回ダイオキシン類総合調査検討会議事録 第1回ダイオキシン類総合調査検討会 議 事 録 ダイオキシン類総合調査検討会 日 時 : 平成9年9月30日 (火) 午後4時00分〜6時00分 場 所 : 合同庁舎5号館別館 共用23号室 出席委員 : 有藤 平八郎 労働省産業医学総合研究所有害性評価研究部部長 池田 正之 京都大学名誉教授 池戸 重信 東京農林水産消費技術センター長 井上 達 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部長 黒川 雄二 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長 清水 英佑 東京慈恵会医科大学教授 清水 誠 日本大学生物資源科学部海洋生物資源学科教授 鈴木 継美 前国立環境研究所所長 高田 勗 中央労働災害防止協会労働衛生検査センター所長 多田 裕 東邦大学医学部小児科教授 田中 勝 国立公衆衛生院廃棄物工学部長 寺田 雅昭 国立がんセンター研究所所長 遠山 千春 国立環境研究所環境健康部長 豊田 正武 国立医薬品食品衛生研究所 食品部長 林 裕造 北里大学薬学部客員教授 宮田 秀明 摂南大学教授 森田 昌敏 国立環境研究所地域環境研究グループ統括研究官 安田 峯生 広島大学医学部教授 山本 出 東京農業大学農学部教授 渡邊 昌 東京農業大学農学部教授 欠席委員 : 小山 次朗 中央水産研究所環境保全部水質化学研究室長 武谷 雄二 東京大学医学部教授 武田 信生 京都大学大学院工学研究科教授 富永 祐民 愛知がんセンター研究所長 議事次第 1.開 会 2.挨 拶 3.委員の紹介 4.検討会の設置について 5.座長の選出 6.議 事 1)公開について 2)ダイオキシン類調査研究について 3)その他 7.閉 会 議事録 ○事務局(阿部) それでは、時間になりましたので、第1回ダイオキシン類総合調査検討会を始めさせ ていただきます。 本日は、御多忙にもかかわらず、当検討会に御出席いただきまして、委員の皆様には 厚く御礼申し上げます。 なお、小山委員、武谷委員、武田委員、富永委員からは事前に連絡を承っておりまし て、残念ながら本日は御欠席でございます。 それでは、初めに、厚生省衛生局長から皆様に御挨拶申し上げます。 ○小野生活衛生局長 厚生省生活衛生局長の小野でございます。 先生方におかれましては、御多忙の中、ダイオキシン類総合調査検討会の委員をお引 き受けいただき、また、本日、第1回の会議に御出席を賜りまして厚く御礼を申し上げ ます。 もうすでに先生方、十分御承知のことと思いますが、ダイオキシン問題というのは今 国民の関心の非常に高い問題でございます。このダイオキシンの我が国におきます発生 源は、その8割から9割がゴミ焼却施設から出てくると推計をされている訳でございま す。我が国におきます家庭ゴミの処理は第1次的に市町村が行うという原則になってお ります関係上、ゴミ焼却施設が欧米諸国に比べますと大変多うございます。この排出源 対策の強化とともに、ゴミ処理対策を総合的に推進する必要がある訳でございまして、 私どもといたしましても、関係省庁とも連携をとりながら施策を強化しているところで ございます。 ダイオキシンの及ぼす健康問題というのが非常に国民の皆さんの関心を引いていると ころでございます。これまでダイオキシンの健康被害といいますのは、工場の爆発事故 等の事例はございますけれども、今問題にされておりますのは、長期慢性曝露による健 康影響ということが言われている訳でございます。現在、ダイオキシンの毒性、あるい は健康に対する影響といったものがすべて解明されている訳ではないという中で、これ から調査研究を進めていかなければならないという状況にある訳でございます。私ども 関係省庁でもいろいろ検討を行ってきた訳でありますが、長期にわたる調査ということ が今後必要になることが予想されます。環境と健康との関係をどう考えるかというふう なことも非常に重要なことでございます。そういったことが背景にございまして、全体 の関係省庁の調査計画につきまして、専門の先生方からご助言をいただきまして、各々 の研究班を動かしていく必要があるというふうに判断をした訳でございます。 後ほど環境庁等の方からお話があると思いますが、こういった問題の緊急性に鑑みま して、今年度、科学技術庁の振興調整費から4省庁の共同研究といたしまして 3,000万 円の予算を確保した訳でございます。さらに、私ども厚生省におきましては、本年度約 2億 5,000万円の研究費を確保いたしまして、来年度におきましては、5億円以上の予 算を確保すべく概算要求に盛り込んだところでございます。つきましては、これらの研 究費がより実りあるものとして、他省庁と有機的にうまく連携をした研究になりますよ う、先生方のお知恵を是非拝借をいたしたいと考える次第でございます。これらの研究 成果が国民の健康のために生かされることを祈念いたしまして、私の御挨拶といたしま す。 ○事務局(阿部) それでは、続きまして、田中環境庁企画調整局長から皆様に御挨拶申し上げます。 ○田中企画調整局長 環境庁の企画調整局長の田中でございます。先生方、本当にお忙しいところ、この検 討会の委員をお引き受けをいただきまして、また、本日はお集まりをいただきまして本 当にありがとうございます。 日頃から先生方には、環境行政の推進で一方ならぬ御協力、御尽力を賜りまして、こ の機会に厚く御礼を申し上げます。 ただいま厚生省の方からもお話がございましたように、ダイオキシン類をめぐる問題 は本当に全国的に大きな問題となっておるところでございまして、人の健康あるいは生 態系への影響をどう防止していくかということから、対策を進めることが本当に急務と なっておるところでございます。これまで環境庁といたしましても、ダイオキシンの問 題につきましては、検討会をつくりまして研究検討を進めてまいりまして、この8月に 大気汚染防止法の政令を改正いたしまして、ダイオキシン類を大防法の指定物質に追加 をいたしました。そして、廃棄物の焼却炉、それから製鋼用の電気炉を指定物質の排出 抑制施設に指定をいたしまして、排出源の対策を進めることにいたしたところでござい ます。さらにまた、この8月には、ダイオキシン対策に関する5ヵ年計画というものを 策定をいたしまして、これに基づきまして、来年度から5年間、いろいろと施策をやっ ていくということにいたしております。発生源対策、総合モニタリング調査、さらに調 査研究、共通理解の促進、こういった施策を総合的に推進をいたすことにいたしたとこ ろでございます。この5ヵ年計画に基づきましてダイオキシン対策の一層の推進を図る ためには、関係省庁あるいは地方自治体との密接な連携のもとに、ダイオキシン類によ ります環境や人の汚染状況に関する調査研究を進めまして、科学的知見の積み重ねを図 ることが不可欠となっておるところでございます。このために、地方自治体との連携を 図るということで、この7月に厚生省と共同で全国ダイオキシン類調査連絡会議を設置 をいたしたところでございますけれども、さらに、本日、この検討会の発足によりまし て、ダイオキシン類の汚染に関する調査研究が効率的に推進出来ることと期待を申し上 げているところでございます。幅広い分野から高度な知見をお持ちの専門家の先生方に 御参集をいただきましたこの検討会におきまして、ダイオキシン対策に不可欠な科学的 な知見を基に整理をしていただきまして、今後のダイオキシン対策の方向性を御指導い ただきますようお願いをいたしまして、冒頭の御挨拶にかえさせていただきます。どう ぞよろしくお願いを申し上げます。 ○事務局(阿部) それでは、続きまして、本検討会の各委員から自己紹介をお願いしたいと思います。 有藤委員から順番に時計回りで自己紹介をお願いしたいと思います。 ○有藤委員 有藤と申します。労働省産業医学総合研究所に勤務しております。化学物質の有害性 評価に関する研究を司る有害性評価研究部で研究をやっております。 ○池田委員 池田でございます。一昨年まで京都大学におりまして、ただいまは京都工場保健会と いうところにおります。 ○池戸委員 農林水産省の東京農林水産消費技術センターの池戸でございます。私どもは、食品産 業、あるいは消費者に対します技術的な指導、啓蒙をやっているところでございまして 業務の中で食品の品質、あるいは安全性のモニタリング関係の仕事もやっております。 ダイオキシン関係は今のところ直接関与しておりませんが、この機会に是非勉強させて いただきたいと思います。 ○井上委員 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センターの毒性部長を務めております 井上でございます。専門は病理学・毒性学一般でございます。関連した事柄について勉 強させていただこうと思っております。 ○黒川委員 同じく、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センターにおります黒川でご ざいます。私は、平成7年度から厚生科学研究のダイオキシンのリスク・アセスメント に関する研究班で、この2年半ばかりダイオキシン問題に関与している者でございます ○清水(誠)委員 清水誠でございます。昨年まで東京大学におりまして、ただいまは日本大学生物資源 科学部におりますけれども、水産生物によるいろいろな化学物質等の生物濃縮の勉強を してまいりました。 ○鈴木委員 鈴木継美でございます。昨年まで国立環境研究所におりまして、その御縁もありまし てか、環境庁でやりましたダイオキシンのリスクの検討会のお手伝いをしております。 ○高田委員 高田勗でございます。中央労働災害防止協会の労働衛生検査センターにおります。私 どもの方は、主として職場の労働環境並びに働いている人の健康影響についていろいろ 検査をしているところでございます。 ○多田委員 多田でございます。委員名簿には東邦大学小児科と書いてございますが、その中に新 生児学講座というのがございまして、私は新生児学を担当しております。母乳汚染が問 題になっておりますので、ここでは母乳についてのダイオキシンの問題について検討さ せていただくことになっております。 ○田中委員 国立公衆衛生院の田中です。ゴミ廃棄物の問題を研究、そして教育に携わっておりま す。1984年のゴミ処理に係わる専門家会議、1990年のダイオキシン削減ガイドライン、 それから今年出されたガイドラインの作成に関与してまいりました。 ○寺田委員 国立がんセンター研究所の寺田でございます。専門は分子腫瘍学です。 ○遠山委員 国立環境研究所環境健康部の部長をしております遠山です。環境健康部においては、 環境中の有害因子の毒性が発現するメカニズムから、そのリスク評価に至る基礎的な研 究部門を研究することが任務となっておりますして、そういった面からダイオキシンの 問題についても検討をしております。 ○豊田委員 国立医薬品食品衛生研究所の食品部長の豊田です。これまでダイオキシン以外にも環 境汚染物質のモニタリング調査というものを行っております。今回、厚生省の方の食品 に関するモニタリングにつきまして担当することになりました。 ○林委員 林裕造でございます。一昨年、国立衛生試験所を退官いたしまして、現在、北里大学 薬学部におります。専門は病理学と毒性学でございます。 ○宮田委員 摂南大学薬学部の宮田です。専門として、ダイオキシンをはじめとする有機塩素系化 合物の環境動態や人体汚染影響を仕事としております。 ○森田委員 国立環境研究所の森田でございます。20年ほど前に、ダイオキシンの分析をスタート しようというので、標本を合成するため、結晶をつくったのですが、それが最近テレビ に出てきまして、映っているのは私の手だったりします。 ○安田委員 広島大学医学部の解剖学の教授をしております安田です。私の専門は発生学でござい まして、ダイオキシン類の発生毒性、催奇形性を研究しております。 ○山本委員 東京農業大学の農薬化学の教授の山本でございます。環境にやさしい農薬をデザイン するというのが本来の仕事になります。ダイオキシンに直接関わってはおりませんが、 昭和45年頃、米国でダイオキシンの合成、あるいはそれのトリチウム放射線のダイオキ シンの合成などに関わったもので、それ以来、関心は持ち続けております。 ○渡邊委員 東京農業大学の渡邊です。公衆栄養学を担当しておりますが、今回はダイオキシンの 人への影響というところを統括的に研究させていただくことになりました。 ○事務局(阿部) それでは、本検討会の設置につきまして、関係省庁の合意によります設置要領を作成 しております。この設置要領について簡単に御説明を申し上げます。皆様お手持ちの資 料の4枚目をお開き下さい。 第1の「目的」でございますが、環境、人及び食物への影響の実態等に関する調査方 法について、専門的・技術的立場から情報交換を行う。さらに、これらの研究の調整と 助言を行うということを目的として設置をいたしております。 この構成につきましては、先ほど委員の先生方から御紹介がありましたように、学識 経験者の中から、環境庁及び厚生省が、労働省及び農林水産省の意見を聞きながら依頼 した先生方にお願いをして構成をしております。さらに、この検討会におきまして特別 な事項を検討する場合には、座長の了解を得た上で検討事項に関する専門家にオブザー バーとして御出席をお願いすることが出来るということにしてございます。 次に、お願いする検討事項でございますが、3のところに(1) の環境モニタリングか ら(6) の食物中ダイオキシン類調査まで6項目挙がってございます。ここで一つおこと わり申し上げておきますと、ダイオキシンの発生源対策につきましてはほとんどがゴミ 焼却炉という現状もあり、私ども厚生省の施策の中で扱われる部分が多く、別途検討会 を設置して検討しておりますので、この検討会議の検討事項からは除外させていただい ております。本検討会議では環境と人の健康に対する影響に焦点を絞った調査研究につ いて総合的御審議をお願いしたいと考えているところでございます。 次に「座長」でございますが、検討会に座長を置きまして、検討員の皆様の互選によ ってこれを定めるということにさせていただきます。また、座長に事故あるときには、 座長があらかじめ指名する委員がその職務を代行するという形にしてございます。 この検討会の庶務は、厚生省生活衛生局企画課と環境庁の環境保健部環境安全課及び 環境リスク評価室が交代で行うこととしております。 さらに、後ほど公開について御審議をいただきますけれども、この検討会は原則とし て公開で行いまして、その資料等についてはインターネット等で広く公開をすることと したいと考えております。 それでは、早速、座長の選出に移らせていただきたいと思います。ただいま説明させ ていただきましたとおり、座長は委員の先生方の互選によって定めることとされており ます。いかがいたしましょうか。どなたか御推薦いただきたいのですが。寺田委員、ど うぞ。 ○寺田委員 このような大きな会で、難しい問題を扱うので大変でしょうけれども、林委員がリス ク・アセスメントなどで非常に経験もおありですし、御苦労ですが、やっていただけれ ばいいと私は思いますが、いかがでございましょうか。 ○事務局(阿部) 鈴木先生、どうぞ。 ○鈴木委員 私も、林委員がやってくださるのが一番いいと思います。 ○事務局(阿部) 只今、寺田先生と鈴木先生から、林先生が座長に適任ということで御推薦がございま したけれども、他の委員の皆様、いかがでございましょうか。 (「異議なし」の声あり) ○事務局(阿部) ありがとうございます。林先生、お引き受けいただけますでしょうか。 ○林委員 非常に責任重大な仕事でございますけれども、引き受けさせていただきます。 ○事務局(阿部) それでは、林先生、座長席にお願いいたします。 (林座長、座長席へ着席) ○事務局(阿部) ありがとうございます。続きまして、設置要綱の4番にございますように、座長の指 名によりまして、座長に事故があった場合等に代行していただく副座長を決定すること になっております。林先生、いかがいたしましょうか。 ○林座長 では、僣越でございますけれども、指名をさせていただきます。前国立環境研究所長 の鈴木継美委員と国立医薬品食品衛生研究所の安全性生物試験センター長の黒川雄二委 員に副座長をお願いしたいと思います。 ○事務局(阿部) 鈴木先生と黒川先生、よろしくお願いします。それでは、林先生、議事進行をよろし くお願い申し上げます。 報道機関の方には申し訳ありませんが、ここでカメラだけ退室していただきます。 (報道機関退室) ○林座長 本調査会は、多分野にまたがる非常に複雑な会議でございますので、やはり委員の先 生方の御協力なくしてはとても出来ないということで、先生方、よろしく御協力をお願 い申し上げます。 では、早速議事に入らせていただきたいと思いますけれども、その前に、本日の資料 について確認したいと思います。事務局からよろしくお願いします。 ○事務局(阿部) 皆様のお手元に「第1回ダイオキシン類総合調査検討会」の表紙の付いた資料が一式 ございます。最初に検討会委員の名簿と座席表がございまして、その後に先ほど御説明 申し上げました設置要領がございます。その後に資料一覧というのがございますので、 これを御覧いただきたいと思います。資料1が「公開について(案)」です。その次に 「参考」といたしまして、平成7年9月29日の「審議会等の透明化、見直し等につい て」の閣議決定の資料が添付してございます。その次に、資料2「ダイオキシン類調査 研究について」がございます。この表紙を1枚めくっていただきますと、資料2−1と いたしまして、平成9年度の「環境庁におけるダイオキシン類総合調査について」とい う資料がございます。これが1ページから19ページまでございます。次に、資料2−2 が厚生省の資料でございまして、資料2−2-1として「厚生省におけるダイオキシン対 策について (厚生省生活衛生局) 」が2枚、それから資料2−2-2といたしまして「ダ イオキシン類総合調査研究計画の概要 (厚生省生活衛生局・児童家庭局) 」という資料 が9枚ございます。その後に資料2−3として「平成9年度科学技術振興調整費『ダイ オキシン類汚染に関する緊急研究』実施計画」という資料が3枚付いております。 本日の資料は以上でございます。 ○林座長 どうもありがとうございました。もし資料で足りない分がございましたら、事務局の 方にお申し出いただきたいと思います。 続きまして、本検討会の公開及び資料の取り扱いについて決定したいと思いますけれ ども、事務局の方から御説明いただけますか。 ○事務局(阿部) それでは、先ほどの資料1「公開について(案)」について簡単に御説明申し上げま す。 公開につきましては、閣議決定された「審議会の透明化・見直し等について」に倣い まして、次のように取り扱うこととしたいと事務局では考えておりますので、お諮りい たします。 本検討会の開催日時、予定場所、議題等につきましては、決定後速やかに公開すると いうものであります。 会議につきましては、報道関係者の会議場への入室を認めるものとする。ただし、個 人の秘密、企業の知的所有権等が開示され、特定の者に不当な利益あるいは不利益をも たらすおそれ及び公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれその他非公開とする ことに正当な理由があるというところにつきましては、この限りではないという形でご ざいます。 本検討会の議事録につきましても、委員の皆様の了解を得た上で公開とする。ただし 公開するに適当でない部分については非公開とすることが出来るというものでございま す。 それから、本検討会の提出資料につきましても、原則公開、先ほどと同じ条件におい て、非公開とすることが出来る、このような形でお願いしたいと考えております。よろ しくご審議いただきたいと思います。 ○林座長 どうもありがとうございました。ただいまの御説明に何か御質問ございませんでしょ うか。 では、ないようですから、本検討会は報道関係者に原則公開することといたしまして 提出資料についても原則公開。又、議事録につきましては、委員の了承を得て公開する ということにいたします。なお、今回使用する資料については、特に公開するに不適切 な部分はございませんので、全資料を公開といたしたいと思います。 では、次に「ダイオキシン類調査研究について」の議事に入らせていただきます。各 省がそれぞれ今までに行ってきた取り組み及び今後の研究方針について、担当者から資 料に従って説明があるということなので、お願いいたしたいと思います。まず、資料2 −1に従って環境庁からお願いします。 ○事務局(中島) 私、環境庁環境安全課長の中島でございます。私の方からは、資料2−1の中の環− 1という資料に基づきまして、ダイオキシン対策に関する5ヵ年計画について、概要を お話をさせていただきたいと思います。 初めに、7ページを開けていただきたいと思います。これは、ダイオキシンにつきま しては、主たる発生源であります廃棄物焼却施設等から発生をいたしまして、その後、 大気あるいは河川、海洋、土壌等を経まして農作物、畜産物、魚介類を経て、人あるい は生態系へと汚染の蓄積が進んでいくというものを表した図でございます。ダイオキシ ン類の調査研究におきましては、全体の経路を見渡した総合的な実態の把握と、また、 これに基づく対策が不可欠であるということでございます。 次に、3ページに戻っていただきたいと思います。ダイオキシンにつきましては、人 の健康影響を未然に防止するという観点から、対策の強化について検討を行っておりま す。これに基づきまして、5ヵ年計画を取りまとめておりまして、平成10年度からの5 ヵ年間に発生源対策、モニタリング調査などを含めまして、総合的な対策を講ずること としております。これまでさまざまな検討を行ってきておりますが、特に本年5月にダ イオキシンのリスク評価及び排出抑制対策のあり方についての検討結果の御報告をいた だきまして、6月に中央環境審議会でダイオキシンを大気汚染防止法の指定物質に指定 するなどの結論をいただいたところでございます。大気系の発生源につきましては、本 年8月に大気汚染防止法施行令の一部を改正いたしまして、対策の具体化を図ることと いたしました。また、今後さらに発生源や環境中の挙動などについての科学的な知見を 充実させつつ、未然防止の観点に立って、実現可能な対策から着実に推進をしてまいる こととしております。 この5ヵ年計画の概要につきましては、大きく4点ございます。まず最初の1点目は 発生源対策等の推進ということでございます。廃棄物焼却炉と製鋼用の電気炉について 大気汚染防止法による規制的措置を12月1日から施行いたします。また、その他の発生 源につきましては、その発生実態を調査いたしまして、排出抑制手法の検討を概ね3ヵ 年で行いまして、その結果を踏まえて対策に移していくということでございます。また 排出抑制のための排ガス処理装置などについての低利融資及び税制上の優遇等の対策を 行うこととしております。 2点目は総合モニタリング調査ということでございますが、大気、水質、土壌、底質 及び人の汚染状況につきまして、概ね3年間調査を行いまして、その結果を踏まえて排 出抑制対策等に反映させる。その後も引き続き総合的なモニタリングを実施するという ことでございます。 また、3点目として調査研究につきましては、ダイオキシン類の環境中での挙動把握 に関する調査研究を行います。また、大気環境と健康影響との関連についての疫学調査 などの研究を行いますが、これにつきましては後ほど詳しく担当からまた御説明をさせ ていただきます。 また、4点目でございますが、共通理解の促進を行います。ダイオキシンにつきまし ては、国民の間での理解の齟齬・相違によりまして社会的不安が生じておりますが、こ れを解消し適切な理解を求めていくためにリスク・コミュニケーションを行うというこ とでございます。 次に、6ページでございますが、これは年次計画でございます。申し上げましたよう に、既に大気汚染防止法に基づく規制措置等につきましては本年から施行されますし、 経済的手法につきましても可能なものから実施をいたします。研究につきましては結果 についての取りまとめを概ね3年目に行い、また、5年目に全体を見直して取りまとめ るというような計画で進めてまいることとしております。 それでは、引き続きまして、調査研究の内容についてそれぞれ説明をさせていただき ます。 ○事務局(牧谷) 環境保健部環境リスク評価室の牧谷と申します。それでは、平成9年度の環境庁にお きます調査研究について御説明を申し上げます。 まず、資料の9ページでございます。 環境モニタリングにつきましては、大気、水、底質等いろいろな項目がございまして 関係局の環境保健部、大気保全局、水質保全局の3部局で担当してございます。 まず、調査研究の必要性でございます。我が国におきますダイオキシンの汚染は、か なりの部分がまず大気に排出をされ、次いで水、土壌、底質というものを経由いたしま して、水生生物などに濃縮され、さらには人や生態系に広がるということでございます ダイオキシン類による環境汚染の実態を把握するためには、このような汚染の動態を踏 まえて、幅広い環境媒体を対象とした計画的なモニタリングが必要であると考えられま す。 次に、現在までの調査研究の状況でございますけれども、これまで環境庁でもモニタ リングを続けてまいりました。主に底質、魚介類、大気については既に10年以上やって まいりました。これらにつきましては、かなりデータの蓄積がありまして、又、サンプ リング方法、分析技術も一応確立しているという状況にあります。一方、土壌あるいは 生態系につきましては、これまで実績がほとんどございません。したがいまして、その 測定技術も未確立な状況にございます。したがいまして、まずは測定のための技術的な 検討というところから着手する必要があると考えられます。さらに、ダイオキシン類測 定費用が非常に高い等の理由がございまして、今後、環境モニタリングの測定網を効果 的に充実させるためにも自治体との連携を常に頭に置きながら進めてまいるということ でございます。 次に4番の調査研究の概要及び今後の方針でございますけれども、(1) 平成9年度、 (2) 10年度以降というところをまとめて説明いたします。10年度につきましては、現在 予算要求中でございます。先ほどの5ヵ年計画に基づきまして、大気、水、土壌等の広 範な環境媒体についてやってまいりたいと思います。ただし、9年度につきましては、 そういった10年度以降の調査の準備段階として、土壌、生態系についてはパイロット的 (予備的)な位置づけで測定方法等の検討をやってまいります。大気、底質など従来の モニタリングについては、継続をしてまいりたいと考えております。 次に、1枚めくっていただきまして、10ページからは個別の調査計画でございます まず、大気環境濃度調査についてでございますが、2番、3番は割愛いたしまして、4 番「調査研究の概要」について説明致します。調査地点といたしましては、国設大気局 というのがございます。このうち工場の近傍、あるいは大都市、中小都市、バックグラ ウンドといった類型を選びまして全部で10ヵ所、それから自動車沿道で全部で4ヵ所、 計14地点での測定を考えております。夏と冬の2回測定するということにしておりまし て、今年度、夏については既にサンプリングを終了しているという状況にございます。 次に、12ページでございます。これは公共用水域におきます水質環境濃度の調査でご ざいます。3番の表にございますように、平成7年度におきましては、東京湾、伊勢湾 瀬戸内海で合計12地点の測定を行っております。9年度におきましても、地点は未定で ございますけれども、全国的にもう少し広い範囲で調査地点を選んでまいりたいと思っ ております。一応、12地点の計画でございます。 次に13ページでございますけれども、先ほど申しましたように、土壌については、ま ず調査方法、分析方法についての検討を今年度は行ってまいりたいということでござい ます。 4番にございますように、本年の12月を目途に土壌調査指針をとりまとめる予定にし ております。 次に、14ページでございます。これは、底質及び水生生物についてのモニタリングで ございます。4番にございますように、本年度も底質39地点、生物38地点の測定を検討 中でございます。協力頂く自治体としては、全部で30自治体を計画しております。さら に、底質につきましても、年度末を目途にしまして底質の測定マニュアルを取りまとめ たいというふうに考えてございます。 次に15ページ、鳥類・ほ乳類のダイオキシン汚染調査でございます。鳥類とほ乳類を 対象に選びまして、モニタリングの調査手法についての検討を本年度はやってまいりた いと思っております。 (1) は鳥類のことが書いてございまして、その4行目にございますように科学技術庁 のお金を使いまして土壌、大気といった環境濃度も併せて測定をし、解析をしてまいり たいと考えております。それから、ほ乳類につきましても、今年度は標準的な調査方法 を確立するための研究をしてまいりたいと考えております。 ○事務局(椎葉) 続きまして、人体の汚染状況の調査について御説明いたします。資料16ページでござ います。 人体の汚染状況の調査についての今年度の研究の概要でございますけれども、まず専 門家による検討会を設置して、(1) の臓器中のダイオキシン濃度の調査、それから (2) の臍帯における濃度調査を実施することとしております。 まず(1) でございますけれども、これは全国の大学医学部法医学教室で試験的に集め られました屍体臓器中のダイオキシン濃度を測定いたしまして、汚染状況を調査すると ともに、また地域別の比較検討を実施したいということを考えておりまして、今年度は 標準的な調査手法を確立したいというふうに考えております。また、試験的に20歳〜60 歳までの男子の精巣の組織標本から形態学的に精子形成量を計量化いたしまして、臓器 中のダイオキシン濃度と精子形成の相関について検討したいということも予定しており ます。 (2) でございますけれども、これは臍帯における濃度調査でございますが、出産時に 得られます臍帯中の脂肪組織を用いましてダイオキシン濃度を測定し、特に最近問題と なっております胎児期のダイオキシン類の汚染状況について試験的に調査したいと考え ております。 9年度は(1) の臓器濃度マニュアルを作成して標準的な手法を確立する予定でござい ます。そして、平成10年度以降に、全国6ブロックで人の汚染状況の把握という観点で 臓器濃度調査を実施する予定でございます。 ○事務局(牧谷) 次に17ページでございますが、テーマが「ダイオキシン類の環境中挙動に関する調査 研究」でございます。 目的及び必要性でございますが、我が国におきまして、ダイオキシン類は主に焼却系 の発生源から排出されていると推定されておりますが、発生源から大気、水等の環境媒 体を経て、人や生態系に曝露する過程におけるダイオキシン類の動態、挙動といったこ とについての知見は非常に限られている状況にあります。このようなダイオキシン類の 環境中挙動に関する知見は、発生源に関する既存の対策の効果の把握及び予測、新たな 対策の必要性の検討、あるいは土壌、食物等を経由した曝露に対する対策の検討と、い ろいろな検討に不可欠であると考えられます。 その調査研究の概要でございますけれども、(1)といたしまして、ダイオキシン類の 発生、分解、濃縮、摂取の収支。(2)土壌、底質へのダイオキシン類の蓄積及び分解の 状況(3)土壌、底質のダイオキシンの食物への移行、濃縮等に関する知見を得るという ことで発生源データや環境モニタリングの結果を整備し、必要に応じて実測を行う。 さらに、環境モデルによる検討を行うということを考えてございます。 平成9年度でございますけれども、大きく三つ考えております。まず、地域における ダイオキシン類の実測ということで、大気、土壌という系につきまして実測を考えてお ります。すなわち大都市域、それからバックグラウンドにおきまして、大気、大気降下 量、土壌の試料を採取いたしまして分析をし、両者の比較検討を行うということを考え ております。 それから、2番、環境運命予測のためのモデルに関する検討でございます。9年度は まず準備といたしまして、既存の環境モデルの調査と、それらのモデルにおきます諸条 件についての考察を行いたいと考えております。 3番は、底質、水生生物系におけるダイオキシン類の動態に関する検討ということで 9年度におきましては、主に文献等の収集を行うという計画でございます。 10年度以降13年度までは、大気、土壌系における実測、底質、水質、水生生物系にお ける実測、環境モデルによるシミュレーションを行いまして、平成14年度取りまとめの 予定としております。 ○事務局(野田) 次に、18ページ環−2−(4)の資料について、大気保全局企画課から御説明いたします 調査研究名は「ダイオキシン類の大気環境濃度と健康影響の関連についての疫学調査」 でございます。 先ほど説明がございましたけれども、大気汚染防止法に関連いたしまして、この9月 12日に大気環境濃度の指針を大気保全局長通知で制定をしたところでございます。ダイ オキシンの環境中挙動や、人への健康影響に係る知見が不足しているという状況のもと で、大気単独でみれば、諸外国に比べて決して低くはない大気環境濃度といったことが ございまして、行政といたしましても注意深く検証する必要があると考えております。 スケジュールは、4にございますように、10年から12年までが横断調査、その後、追 跡調査をしていくということでございます。環境庁では、過去10年間にわたり、大気環 境濃度と健康影響の関連につきましては、10万人規模で10年間ということで、100万人 年の観察をしてきているコホート*1集団がございます。そうしたことから、もともと 他の大気環境中汚染物質の交絡因子になる関係もございますけれども、コホートの利用 も考慮に入れながら、平成9年の間に基本的な調査手法等の検討を行った上で、10年度 に正式な検討会を設置をして検討を進めていただくことにしたいと考えておるところで ございます。 調査の全体の模式図につきましては、19ページでございます。健康影響の比較を既存 の統計等を初期3年間は横断的調査をしながら、いろいろな角度で既存のコホートの起 用も考えて調査をしまして、その後、追跡調査をしていくという考え方でございます。 ○事務局(牧谷) 環境庁の各種の調査研究につきましては、今後、専門家の先生の御指導を得ながらや っていきたいと思っておりますが、今日までの計画を立てる段階で国立環境研究所の森 田先生と遠山先生に御指導いただいております。両先生から何か専門的なところからの 補足説明がございましたらよろしくお願いいたします。 ○森田委員 国立環境研の森田ですが、ダイオキシンはいろいろな意味で分からない部分がずいぶ ん残っておりまして、特に環境中で一体どのぐらいあるのかということは、部分的に調 べていますけれども、組織的な調査がまだありません。さらに、一般環境から生物、そ れから人体への移動の様子についてもまだ分かっていないので、とにかくそれを正確に 把握するようなシステムの確立が一番重要かという感じがいたします。こういった調査 が統合されてダイオキシンの環境中での動態を完全に解明できると考えます。 それから、先ほどコホートの話が大気保全局企画課の方から出ましたけれども、これ も既に環境庁がやっておりますような調査計画の中にさらに埋め込むことにより、ダイ オキシンがどんなふうに人の健康に影響を及ぼしているかという、影響の輪郭を描くよ うな形で研究がデザインされているかと思います。 ○林座長 どうもありがとうございました。もうお一方、遠山先生。 ○遠山委員 今、森田委員から説明があったこととも一部重複いたしますけれども、基本的にはダ イオキシンの分析というのは極めて難しく、高度な技術を要するということで、これま でダイオキシンの曝露量及び生体内の負荷量、特に人に関しての情報は極めて少ないの が現状であります。今回の調査というものがダイオキシンの生体負荷量、あるいは曝露 量に対する基本的な情報を提供するという面から、それなりの意味を持つようなものと して位置づけられているだろうというふうに思います。 あと、コホートにつきましても、この調査研究に加えて、ほかの曝露量のデータも含 めて総合的に研究することによって、実際にダイオキシンの曝露と、その因果関係につ ながるような情報が得られるというふうに理解しております。 ○林座長 どうもありがとうございました。引き続きまして、厚生省からの御説明をお願いした いと思います。 ○事務局(阿部) それでは、厚生省のダイオキシン対策並びに研究計画の内容について御説明申し上げ ます。 資料2−2-1という資料を御覧いただきたいと思います。1枚めくって1ページ目に 厚生省におきます「ダイオキシン類の総合対策概念図」というものがございます。厚生 省におきましては、今年度、中央にございます厚生省ダイオキシン類総合対策連絡会議 というものを設置いたしました。生活衛生局長を議長といたしまして、厚生省内の発生 源から健康影響に至るダイオキシンの関係局・課がこちらにすべて集まりまして、この 中で省としてのダイオキシンに対する行政対応、政策等について検討するための会議で ございます。これは生活衛生局が中心になってございますので、ダイオキシンの政策展 開につきましては、最終的には生活環境審議会、専門的にはその中での化学物質専門委 員会、あるいは廃棄物処理基準等専門委員会等におきまして必要な御議論をいただくと いう形になってございます。 さらに、環境庁と合同で、全国ダイオキシン類調査連絡会議というものを今年度行い まして、地方自治体との協力関係も深めていくという形でございます。 分担としては水道環境部環境整備課におきましては、発生源である焼却炉を所管して ございますので、そちらの方の対策を強化しておるところでございます。本年度、廃棄 物の処理及び清掃に関する法律を改正いたしまして、新設炉につきましては、 0.1ng- TEQ/Nm3という基準に改正をし、規制を強化したところでございます。右側の方の企 画課以下、乳肉衛生課、児童家庭局等では、血液・母乳等、人の汚染状況、それから人 の曝露の主要な経路となっております食品についての研究などを所管してございますが これらについての研究体制を考えていこうというところでございます。 それでは、資料2−2-2の「ダイオキシン類総合調査研究計画の概要」について説明 を申し上げます。 ○事務局(山本) 厚生省生活衛生局の山本と申します。それでは、資料2−2-2の「ダイオキシン類総 合調査研究計画の概要」について御説明をさせていただきます。 まず、1ページには、人の健康影響に係る厚生省の調査研究関係の研究組織と研究課 題という資料が出てまいります。現在のところ、厚生省では、ここにございます六つの 研究班にて各分野の検討を行っていただいております。 まず、1つ目は、ダイオキシン類分析に係る外部精度管理手法とその評価方法に関す る研究でございます。ダイオキシンが微量のレベルでございまして、非常に測定の精度 を要するので、精度を確保するためのシステムをここで御検討いただくことになってお ります。 2つ目は、食品中のダイオキシン類濃度に関する調査研究でございます。ダイオキシ ン汚染の人体への曝露の主要な経路として、食品が挙げられますので、食品中のダイオ キシン汚染の実態をここで調査研究していただくことになっております。 この二つの研究テーマにつきましては、国立医薬品食品衛生研究所の豊田先生の方に お願いしておりまして、先生を中心に、今後も研究を取り進めていただく予定でござい ます。 次に、3つ目に母乳中のダイオキシン類に関する研究というものがございます。先生 方も御存じのように、母乳中のダイオキシン汚染というのが非常に問題になっておりま す。母乳中にどのぐらいのダイオキシンが入っており、それを赤ちゃんがどのぐらい摂 取するのかということにつきまして実態が分かっておりませんので、東邦大学医学部の 多田先生にお願いいたしまして、その実態等を解明していっていただくという予定でご ざいます。 4つ目はダイオキシン類の人体汚染に関する研究でして、東京農大の渡邊先生にお願 いすることになっております。上の母乳中のダイオキシンに関する研究と連携しまして 人体のほかの部分、例えば血液あるいは体内脂肪、あるいは人体汚染に関わる汚染経路 そのあたりを総合的に渡邊先生の方で緊急に取り組んでいただきたいと考えております それから、5つ目の子宮内膜症に及ぼすダイオキシン類の評価に関する研究、6つ目 のダイオキシンのリスク・アセスメントに関する研究、これらにつきましては、既存文 献のレビューを中心に、それぞれ国立医薬品食品衛生研究所の菅野先生とセンター長の 黒川先生の方で研究の取り組みを進めていただく予定にしております。 厚生省といたしましては、ダイオキシン類の人体影響ということに関しまして、以上 六つのテーマを取り扱いまして、それらを総合的に取りまとめていく必要があろうと考 えております。今後、各主任研究者、外国からダイオキシンの専門家、国立がんセン ター研究所長の寺田先生をメンバーとして、省内に総合研究検討会議を設置いたしまし て、研究を総合的に推進していきたいと考えております。 2ページから年次計画を載せております。ダイオキシンの人体への健康影響に関する 問題というのは、長い時間をかけて取り組む必要のあるテーマですが、現在のところは とりあえず平成14年度を目途に各研究テーマに取り組んでいきたいと考えております。 簡単に申し上げますと、まず外部精度管理につきましては、標準化、あるいはそのシ ステムづくりにつきまして今年度から取り組んでいきたいと考えております。 また、食品中のダイオキシン類の濃度に関する調査につきましては、個別食品別の調 査、トータルダイエットスタディ(一日摂取量調査)、この2種類を当面中心に据えま して、既に食品につきましては平成4年度から7年度で魚介類を、それから平成8年度 では野菜類も加えまして調査を行っておりますが、さらに拡充しまして、平成9年度以 降取り組んでいきたいと思っております。それから、比較的高い汚染が認められたとこ ろにつきましては、定点調査などで経時的に変化を追っていきたいと考えております。 それから、ダイオキシン類の人体汚染に関する研究につきましては、これまで余り取 り組みの実績がございません。つきましては、まず測定方法、測定方法の標準化、さら に人体汚染の指標として何を取り上げるべきかという基礎的なところから詰めてまいり たいと考えております。そこの基礎的な部分を詰めました後、ダイオキシンと人体汚染 さらに、それの人体に与える健康影響につきまして、どのような調査を実施していくべ きかという方向性を検討していただき、さらにパイロットスタディ(予備調査)などで 将来的に活動の方向を探っていきたいと考えております。 次に人体汚染の中でも特に母乳中のダイオキシンにつきましては、過去3年間、小規 模な調査を実施しておりまして、それなりの基礎の取り組みがあるという事情がござい ます。さらに、本年度から測定方法の標準化、あるいは精度管理に取り組みまして、体 制を整備するとともに、まず4都道府県で実際にお母さんの母乳を測定いたしまして、 かつ、それぞれの対象者の皆様からの健康調査を組み合わせまして、母乳中のダイオキ シンの汚染実態を解明していきたいと考えております。さらに、子宮内膜症によります ダイオキシン類の評価に関する研究やリスクアセスメントについても本年度いっぱいを めどに文献調査を実施していきたいと考えております。 今後、多岐にわたり、かつ非常に複雑な研究に取り組んでいかなければならないわけ ですが、その際に、ダイオキシンについては非常に多くの考えなければいけない点があ ると考えております。それを8ページに箇条書きしてございます。私どもとしては、今 後、ダイオキシンに関する調査研究の中でこのようなことを検討していかなければいけ ないと認識しております。本日のこの検討会の場で、先生方から、このような点につい てどのように考えていくべきか、あるいは、どのように取り組んでいくべきかという点 について、是非さまざまな御意見をお寄せいただければと考えております。 簡単ではございますが、それぞれ御説明させていただきますと、まず1点目として、 人体へのダイオキシン類の曝露経路について検討する必要がございます。これにつきま しては、現在、主要な直接の曝露経路が食品ということを指摘されております。その食 品の汚染に至るメカニズムというのはどのようになっているか。あるいは、それを解明 していくためにどのように調査研究に取り組んでいけばいいかということを是非御助言 いただければと考えております。その中には生物濃縮の可能性、あるいは汚染土壌など の環境汚染と食品の関係なども含まれてくるのではないかと考えております。 それから、2点目といたしまして、人体の汚染状況の把握が必要と考えております。 これにつきましては、今年度いろいろ取り組みを考えておるのでございますが、例えば 汚染経路の解明にはどのような要件が要るか。あるいは、その際、居住地区、性別、年 齢、食習慣など、どのような調査項目を選定して関連性を検討していくべきか。さらに 追跡期間と追跡方法はどのような方法が適当であるか。さらに、環境汚染との関連とい うことで、使用する環境データはどのようなものを選ぶべきなのか。具体的な汚染の程 度の意味づけというのはどのように考えていくべきか。統計学的に必要なサンプル数と いうのはどの程度が求められるのかといったところを是非御指導いただきたいと考えて おります。 3点目として、健康影響の解明ということでも、いろいろ難しいところがございます 一つは、乳児への健康影響。これは非常に難しいことだと思いますけれども、用いるべ き健康指標、そのために必要な調査の追跡期間、方法はどのように考えていけばよいの か。さらに、母乳の汚染状況から乳児への蓄積量の推計する方法や、その結果をどう考 えていくべきか。統計学的検討も必要になります。対象疾患を何にするか、必要な統計 指標は何なのか、疫学的調査方法の検討等さまざまな事項につきまして、どのように検 討していくべきか。 それから、最後に4点目でございますが、許容基準との関係をどう整理するのか。い わゆる人体が摂取する許容レベルというのは、食品の基準、あるいは、さまざまな環境 基準とどういうふうに関係させていくか。あるいは、TDIなどとの関係をどのように 議論していくかという点についても是非御意見をいただきたいと考えております。 私どもの調査研究の詳細につきましては、豊田先生、多田先生、渡邊先生の方から補 足をお願い出来ればと思います。 ○林座長 どうもありがとうございました。では、豊田先生からお願いします。 ○豊田委員 それでは、4ページでございます。「ダイオキシン分析に係る外部精度管理手法及び その評価方法に関する研究」ということでございます。食品に関しましては、現在、よ うやくいろいろな機関で分析が始まったような状況でございます。そうした場合に、分 析機関間の精度をどういうふうに管理したらいいのかということを検討しなければいけ ない。従来はそういうものがなかったということで、今年から始めようということでご ざいます。 それから、2番目の「食品中のダイオキシン類濃度に関する調査研究」ということで ございます。これにつきましては、昨年、既に一部の食品については分析を行っている ところでございますが、今年は、(1)のところに書いてございますように、トータルダ イエットスタディを行うことにしております。トータルダイエットスタディには利点が ございまして、その摂取量に対しまして、どの食品群から主に摂取されるのかというこ とが分かる訳でございます。ここにございますように、1から14群の食品群ごとに分析 いたしまして、それを合計して摂取量にする訳でございます。そのほか、個別食品調査 におきましては、広範な食品について、その汚染状況の把握を行う訳でございます。そ の他、一番最後に定点調査も行ってみたいと考えております。 ○林座長 どうもありがとうございました。では、続きまして、多田委員、お願いいたします。 ○多田委員 それでは、「母乳中のダイオキシン類に関する研究」の概要を説明させていただきま す。 研究目的は、母乳中のダイオキシン類の濃度の測定及び母乳を通じて乳児に移行する ダイオキシン類の総量を推計するとともに、ダイオキシン類の濃度に影響を与える因子 を探るための調査検討を行うということになっております。各先生方から御報告いただ いておりますように母乳中の濃度は、母親の汚染状態に影響されること、授乳期間中に 濃度が変化する等いろいろな要素で変わってまいります。したがって、この研究では、 下の方の(3)に書いてありますが、本年度は4都府県の一定の年齢層の初産婦の妊婦さ んにお願いをすることとなっております。そして、お母様方に4回母乳を提供していた だいて、授乳期間中の濃度変化を調べることで、今後、どのような評価をするかという ことを決めていきたいと思っております。 そのお母様方の背景も、それまでの食事習慣、あるいはどこに住んでおられたかとか いろいろ影響していると思いますので、なるべく生活歴等のバックグラウンドをいろい ろ教えていただきまして、そういう背景がどう影響しているかということを見ていきた いというふうに考えております。 赤ちゃんの方も、健康状態は一応チェックをいたしますが、摂った母乳によって赤ち ゃんの発育や何かに影響が出ているかどうかということは、数も少のうございますし、 完全なことは出来ないと思います。しかし、お母様と赤ちゃんの追跡を行っていきたい というふうに思っております。 母乳を通じて赤ちゃんに移行するダイオキシン量ということになりますと、母乳の濃 度に赤ちゃんが実際に飲んだ量を掛け合わせなければならないんですが、これは、簡単 なようで実は難しく、例えば現在3ヵ月の赤ちゃんが何cc母乳を飲んでいるかという正 確なデータが今、日本にございません。母乳を飲む度に、毎回体重をはかって何cc飲ん だかという集計をしなければいけないものですから、極めて手間のかかる調査でござい まして、今までそのような調査結果はありません。そこで、母乳をどれぐらい飲んでい るかという調査をほかの集団で行うことを考えております。 それからもう一つは、5番目にございますように、大阪府では、従来より保存した母 乳がございます。量が少ないので個々についてはかることは出来ませんが、まとめたも のを測定いたしまして、過去25年間の母乳中のダイオキシンの濃度の推移というものが およそ出るのではないか考えておりまして、この研究も同時に進めていく予定にしてお ります。 ○林座長 どうもありがとうございました。では、次に渡邊委員、お願いいたします。 ○渡邊委員 私の研究班では人体へのダイオキシン類の影響に関する研究を行うことになっており ます。本年の2月にリヨンでダイオキシンの発がん性についてのレビューワークがあり まして、世界各地のダイオキシン曝露のデータが持ち寄られたのでありますが、例えば 西独のウェルディンゲンの工場の爆発にしても、それからイタリアのセベソの住民が曝 露した爆発にしましても、ほとんど20年たたないと影響が出ておりません。そのような 高濃度の曝露で20年追跡してやっと影響が出てくるというようなものですので、低濃度 の持続曝露でどうなるのかというところは全く未知の分野でありまして、そのあたりを 主体に検討したいと思います。 多田先生のところで使用いたします調査票と私のところで使用する調査票は同じもの を使うことを計画しておりまして、例えば食事調査の調査票も、厚生省多目的コホート 研究で開発しました、少なくとも総エネルギーと脂肪摂取を8割以上把握出来るという 調査票を用いる予定でおります。 今年度は日本人が実際にどれぐらいダイオキシンを体内に保留しているかということ を中心に調べたいと考えております。ただ、血液あるいは人体組織等につきましては、 抽出方法も文献的には確立しておりますけれども、日本の検査機関で実際にはかられた 例というのはかなり少ない訳でありまして、国際的に評価にたえ得るデータを出すよう にしなければと考えております。 ○林座長 どうもありがとうございました。では、最後に、環境、厚生、労働、農水の4省庁で 行っておられます科学技術振興調整費に係る取り組みについて御説明いただきます。 ○事務局(牧谷) それでは、資料2−3をご覧下さい。平成9年度の科学技術振興調整費におきまして 「ダイオキシン類汚染に関する緊急研究」を行っておりまして、これは、関係4省庁が 共同で研究をやっていくということでございます。この科学技術振興調整費と申します のは科学技術庁が持っている調整費でございまして、年度の途中で緊急的に調査研究を やる必要性が生じた場合に対応する。しかも、複数の関係省庁が関与している問題を中 心に、こういった調整費が用意をされております。 ちなみに、8年度はO157の問題でありますとか、ナホトカなどの問題について調整 費が付いております。今年度は、ダイオキシンと地滑りについて予算が付いたというこ とでございます。 「研究の趣旨」でございますけれども、いろいろ書いてございますが、真ん中から少 し下の文章でございます。「しかし、現在、ダイオキシン類の測定・分析が行える施設 は限られており、また、測定費用が高価なため、全国的な調査を実施するためには、測 定・分析技術の改良・開発が望まれる。また、これまで食物や人体等における汚染状況 の分析実績が乏しいことから、試料の採取・処理方法等の研究も必要であり、これら基 礎的検討の実施が急務となっている」とあります。この調整費の趣旨から、特に基礎的 な研究をやるということでございまして、今後、いろいろなダイオキシンの調査研究を していく上での一番ベースになる部分をこの調査研究費でやってまいりたいということ でございます。 その内容につきましては、次のページの「研究の概要」にありますように、大きく二 つの柱がございます。一つ目は、測定・分析手法の研究ということでございます。人や 環境等におけるダイオキシン類の汚染の態様の研究に資するため、ダイオキシン類を含 む試料の調整、分析方法等の測定・分析手法に関する研究を行うということでございま す。この研究につきましては、国立環境研究所の森田先生が研究担当ということになっ ておりましてイムノアッセイ*2といった方法を使って簡易な測定が出来ないかといっ たことなどについての研究をやってまいるということでございます。 二つ目の柱が、ダイオキシン類による環境や生物の汚染の態様に関する研究でござい ます。これは中身がいろいろございますが、全体といたしましては、さまざまな試料に ついて、ダイオキシン類を含む試料の採取方法、測定・評価手法に関する研究を実施す るとともに、環境や人体での各媒体ごとの汚染の態様に関する研究を行う。また、それ らの結果をもとに、各媒体における汚染状況の関連に関する研究を行うということでご ざいます。 まず、(1) の人体の関係でございますが、これは先ほどの東京農業大学の渡邊先生が 研究担当ということでございます。母乳や血液等のダイオキシン類の測定・評価手法に 関する研究を行う。人体中のダイオキシン類の種類、個体差、その要因等に関する研究 を行うということでございます。 (2) の環境中のダイオキシン類の研究につきましては、国立環境研究所の森田先生の 担当でございますが、測定手法・評価手法に関する研究、それから環境中のダイオキシ ン類の種類、分布、その要因等に関する研究でございます。 次の(3) につきましては、さらに内容が三つに分かれてございます。次の3ページを 御覧いただきますと、水産物につきましては水産庁中央水産研究所の小山先生、農作物 等につきましては農林水産省農業環境技術研究所の上路先生、食品につきましては国立 医薬品食品衛生研究所の豊田先生の担当でございます。内容といたしましては、また2 ページに戻っていただきまして、魚介類、水稲、生鮮食品及び加工食品等の食品におけ るダイオキシン類の測定・評価手法に関する研究。食物中のダイオキシン類の種類、差 異等に関する研究。水田土壌等環境中から水稲へのダイオキシン類の移行実態に関する 研究ということになっております。 4番目が労働環境におけるダイオキシン類の研究でございまして、担当は中央労働災 害防止協会の高田先生でございます。内容は、作業環境中のダイオキシン類の測定・評 価手法に関する研究を行うとともに、異なる作業におけるダイオキシン類の種類、労働 者の曝露の差異等に関する研究を行うということでございます。 これらいろいろな研究がございますので、これらを包括する意味で研究推進委員会と いうものが設けられております。3ページの下の方にその委員会の構成が書いてござい ます。第1回目の委員会が9月9日に開かれておりまして、そこでいろいろな意見をい ただきましたので、現在、それを踏まえて、さらに研究計画についての検討をしておる という段階でございます。 ○林座長 どうもありがとうございました。これまでの御説明につきまして、何か御質問、コメ ントなどございましたらどうぞ。 ○渡邊委員 最初に、この検討会の目的というのが先ほど書いてありましたが、単に総合的観点か らの助言を行うのか。それとも、厚生、環境両省庁にまたがる研究を整合させるための 調整も一緒に図るのか。あるいは個々の研究の評価委員会のような形でやるのか。どの あたりに位置づけられるのでしょうか。 ○林座長 ただいまの御質問についていかがでしょうか。 ○事務局(阿部) 基本的に環境庁と厚生省が主体ではございますが、各省庁のダイオキシン類に関する 研究計画をここの検討会の場で公表いたします。それに対して、いろいろな分野の専門 家としてレビューをいただきまして、よりよい研究計画に対する御助言をいただく。そ の点で調整出来るものがあれば、私ども事務局のレベルとしては極力調整して、効果的 な研究を進められるようにするというものでございます。 ○安田委員 ダイオキシン類の測定についての質問ですが、今の御説明と資料を拝見いたしまして PCDD、PCDFが入っているというのは明らかですが、コプラナーPCBはどうか という点をお尋ねしたいのですが……。 ○渡邊委員 コプラナーPCBも一緒にはかる予定にしております。予算規模によって多少左右さ れる可能性はありますが……。 ○宮田委員 多田先生の母乳中のダイオキシンに関する研究について質問ですが、母乳を飲んでい る赤ちゃんと飲まない赤ちゃんの間のフォローアップ・スタディ(追跡調査)などはこ の中では考えておられるのでしょうか。 ○多田委員 本年度の計画では、そこまでは予定しておりません。しかし、今後この研究がさらに 発展していけばフォローアップ・スタディも必要になってくると思います。 ○宮田委員 もう1点よろしいですか。TDIについては今後も継続的に検討していく必要がある わけですが、その検討にあたり、サルを使った毒性実験というのは行わないのでしょう か。それとも外国のデータだけに頼っていくのでしょうか。 ○事務局(内田) 今のところ、サルのデータについては、新たなデータをもとに御議論をいただいてい るところですが、実験については断念しております。その理由ですが、Rierのデータで は、バックグラウンドデータとして、コントロール対照群に3割ぐらいの子宮内膜症が 認められております。従って、かなりバックグラウンドをきちんとしたものでないと、 10例ぐらいでものを言えないんじゃないかと考えます。バックグラウンドデータとして 例えば 100匹近い数のきちんとしたデータを持っていないといけないんじゃないかと思 うんですけれども、予算上の問題と、実験が10年以上という非常に長期にわたると考え られるため、今回は断念しております。 ○池田委員 少数例であればあるほど、出来るだけ特定の個人からいろいろな情報が集められる方 が望ましいと考えます。例えば胎盤をいただいた方に母乳もいただければ、胎盤血中に ダイオキシンが幾らあったか、あるいは胎盤の脂質中に幾らあったか。同時に、その方 の母乳からダイオキシンが幾ら出てきたか。あるいは、その方が食べておられる食べ物 の中でダイオキシンが幾らあるか。症例数が少なければ少ないほど、特定の個人からの 立体的なデータがあるとよりよい評価が出来るようになると考えます。多角的にいろい ろなことをやりますと、それぞれ非常に興味深いデータは出てきますが、全体をまとめ あげることが難しくなる場合があります。 それから、遺体のダイオキシンをはかるというのは大事なことですが、同時に、そう いう検体を得ることはご遺族の了承を得ることなど非常に困難な部分があろうかと思い ます。ご遺族の十分な同意を得た上で綿密な計画のもとに測定を行うべきかと思います 前者は特に理想的なことだけ言っていることになるかもしれませんが、評価する段階 では、やはりその様なデータが必要です。少なくとも全世界的には欠けていることだと 思いまして申し上げます。 ○山本委員 結局、これらの計画は、最終的には人体への影響を評価するということになろうと思 います。私は素人でありますけれども、結局、われわれが毎日食べている食品の中には ダイオキシンと同じようなAH受容体に作用するという天然物もたくさんある訳ですね Amesなどの書いているものを読みますと、そっちの方が影響ははるかに大きい、何十倍 も大きいというようなことが書いてある訳です。そのへんを気にとどめた上で進めてい ただきたいと思っております。 ○渡邊委員 環境庁の研究についてですが、測定項目によってモニタリング地点に差があるようで ありますが、出来るだけ資料2−1の7ページのような関係が本当にあるのかないのか が、エコロジカルに解明出来るようなスタディデザイン(研究計画)でやっていただけ ればと思います。例えば、魚とか、鳥とかアザラシが出てきましたが、鳥はこのモニタ リングの地域のスズメなのか渡り鳥なのかとか、そのあたりのことをきちんと、仮説に 基づいてのスタディデザインを組んでいただければと思います。 それからもう1点は、コホート計画に関してでありますが、環境庁は確かに宮城、大 阪、愛知の3県で大気汚染と肺がんとの関係の研究を10年ぐらい続けましたけれども、 そのコホート自体は、地域がん登録の制度の問題がありまして、40歳以上でも追跡も必 ずしも完全にいかなかった訳ですね。 今回このような低曝露のダイオキシンでは恐らく10年、20年やっても何の変化も出な いと思われる訳ですが、そこのところをどのようにお考えでしょうか。それとも、新規 に食事調査も何もかも、ベースラインを含めたコホートをさらに建設するというお考え でしょうか。 ○事務局(中島) それでは、私の方から初めの方の御質問のお答えをさせていただきたいと思います。 モニタリングの総合性についてということでございますが、これは、これまで環境庁で 行ってまいりました総点検調査などとの関連性もございまして、とりあえず、急に地点 を全部調整し尽くすということは難しいのが現状でございます。可能なものについては 今後、出来る限り総合的なモニタリングとなりますような地点の調整をしてまいりたい と思いますし、新たに地点設定する場合も、そういう観点からの場所の設定に努めてま いりたいというふうに考えております。 ○事務局(野田) コホートの件でございますけれども、先生が御指摘の点については、やはり今、コ ホートしていただいている先生の間でも見解がいろいろございます。それで、私どもの 予算は、基本的にはコホートにつきましては、新たなコホートを設定するというような 考え方になっている訳でございますけれども、既存のコホートにつきまして、ダイオキ シン以外の大気汚染物質の影響といったこともある関係から、9年度中に考え方をある 程度整理をしていくということでございます。ですから、必ず既存のコホートを使うと いう前提で研究を進めていくというわけではございません。 ○林座長 どうもありがとうございました。先ほど山本委員がおっしゃいましたが、ほかの物質 の影響との関連を踏まえて、ダイオキシンのリスク(危険度)を考えるべきだというこ と。これは、環境庁、厚生省の方もよろしくお考えに入れていただきたいと思います。 ○渡邊委員 もう1点よろしいでしょうか。環境庁の調査で臍帯における濃度調査というのがあり ますが、実はこれは厚生省で多田先生の班にお願いして、スタディデザインまで確定し て、インフォームドコンセントのできた組織まで出来上がっているのでありますけれど も、環境庁はそれと同じような形式でおやりいただけるのですか。 ○事務局(椎葉) 16ページの(2) の臍帯における濃度調査の御質問でございますけれども、これは、出 産時に得られる臍帯中の脂肪組織を集められる大学がございまして、そちらの方で試験 的に調査を行うということにしておりまして、もし厚生省の方でそういった動きがござ いましたら、そういったものと連携も図りながらやっていきたい、そのように考えてお ります。 ○林座長 どうもありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。 ○清水 (誠) 委員 三つ申し上げたいのですが、一つは質問、一つは意見、一つはお願いでございます。 一つ目は、環境庁の計画を見ると、全部フィールドで分析したデータを使って行うと いうことなので、そうすると、統計的なスタティック(静的)なモデルかなと思うんで すけれども、そういうふうに理解をしてよろしいかということ。ダイナミック(動的) なモデルを考えるときには、移行パラメーター(係数)を求めるのに、実験的なことも 必要になるかと思いますけれども、その辺はどうお考えかということ、これが質問でご ざいます。 二つ目は厚生省に対する意見ですが、この題目を見ますと従来より、他の化学物質で 見慣れたものもある訳ですね。どれくらいアナロジー(類推)出来るものがあるのか、 ダイオキシンプロパー(固有)のものがどうなっているのかというのを仕分けをなさっ たらいかがかというふうに思います。 それから、3点目のお願いは、先ほど事務局からダイオキシン関係の取り組みはここ に出して、それで全体的に見てもらいたいということがあったので、労働省、農水省の 取り組みについても、簡単に紹介をしていただけるとありがたい。 ○林座長 どうもありがとうございました。ただいまの御質問について、何かございますか。 ○事務局(牧谷) 御質問の件でございますけれども、とりあえず、ここにはおっしゃるとおりフィール ドスタディが書いてございます。ただ、先生の御指摘もありますので、そういった実験 についても検討してまいりたいと思います。 ○山本委員 現場におけるダイオキシンの分析というのは勿論コールドのものを分析するので、G C−MASSとか、あるいは森田先生が考えておられるイムノアッセイとか、いろいろ あると思うんですが、モデル系でダイオキシンの動態を調べようというときですと、ラ ジオアクティブ(放射性物質)の使用ということも非常に便利かと思います。 それから、やり様によっては、例えばトリチウムラボであれば、数十キュリーパーミ リモルというものをつくろうと思えばつくれる訳です。そういうラジオアクティブの化 合物をつくるとか、それを使うという計画がここにはないんですけれども、それはお考 えかどうかということです。 ○森田委員 いまのところ、ラジオアクティブを使うことは考えておりません。環境に持ち込むこ と自体がちょっと難しいところもあります。実験室の中でのモデル的な動態の解明には 一番使い易いかと思いますが。 ○鈴木委員 環境庁の方が今、簡単に「実験も考えてみる」とおっしゃいましたけれども、そう簡 単に実験が出来るような代物ではないと私は思っていますので、そんなに気楽に「実験 をやります」とおっしゃらない方がいいだろうと思いました。それが一つです。 もう一つは、子宮内膜症に関する研究が文献調査だけ単年次で終わってしまうように 伺ったんですけれども、これは将来的に疫学研究に発展させるようなお考えをお持ちじ ゃないのでしょうか。委員の中に産婦人科の武谷教授の名前を見たものですから、先生 にもお知恵を借りながら、疫学調査を将来はやらなければいけないんじゃないでしょう か。 ○事務局(北島) 厚生省の母子保健課でございます。私どもも子宮内膜症等との関連につきましては大 変重要な問題だと思っておりまして、武谷先生とも御相談しているところでございます 症例対象研究*3のような形で子宮内膜症のある方とない方のダイオキシン濃度を血液 についてはかりたいというようなことも検討したところではございますが、現段階では 大量の血液がないとダイオキシン類の濃度をはかる際に精度的な問題があるということ も御指摘をいただいているところでございます。それにつきましては当省の生活衛生局 の方で、血液等のサンプルをこれから着手するということでございますので、その辺の 検査精度がクリア出来れば、そういった問題にも是非着手したいというふうに考えてい るところでございます。 ○鈴木委員 実際には曝露量の評価が非常に難しいというのは勿論分かる話ですが、それはほかの 情報から類推出来るのではないでしょうか。将来的には疫学調査に発展させるんだとい う前提で、どうやったら情報が整理・分析出来るかというふうにお考えいただきたいと 私は思います。 ○渡邊委員 追加ですが、やはり私たちは食品から摂っているダイオキシンが主流になっているの ではないかと思いまして、食事調査と血液濃度など体内の濃度というものを何とか相関 させて、バイオマーカー(指標)になることを期待しております。将来的には、食品の 方は豊田先生の方でデータベース化を少しずつ進めることとなってきておりますので、 何を食べればどれぐらいの曝露と言えるのかというところまでは何とかアプローチした いと思っております。 ○林座長 ありがとうございました。やはり子宮内膜症の問題はダイオキシンのリスクの重要な ポイントだと思いますので、これからの研究の展望を考えて、研究方法をもう一度考え 直してもいいんじゃないかと考えます。 ○渡邊委員 子宮内膜症に関しましては、10年度あるいは11年度に症例対象研究で入った方が効率 がいいのではないかと考えておりまして、産婦人科医の方とその点の打ち合せを少しず つ進めております。 ○宮田委員 食品の調査に関してですが最近、輸入食品が多くなってきております。ダイオキシン の摂取には魚がかなり大きなウエイトを占めているということが言われておりますが、 輸入された魚を考えますと、獲れる場所によってかなり濃度が違うのではないかと考え ます。今後、食品を通じての汚染ということを考えた場合に、輸入食品については産地 のことなどを加味出来るような調査をしていただければよいと思います。 ○山本委員 魚の分析につきましては、食品という観点以外に、環境汚染の指標という観点も入れ てみると面白いかと思います。回遊魚を分析すれば、東京湾、大阪湾、名古屋湾、ある いは伊勢湾などがどのぐらい汚染されているかということが分かります。また、東京湾 の中で一体どこが汚染されているかというのであれば、例えば多摩川の河口や墨田川の 河口に定着している魚介類を使いますとスポット的に分かる。そういう観点も取り入れ られたらいかがかと思っています。 ○林座長 どうもありがとうございました。これは環境庁の方でお考えいただきたいと思います ○田中委員 この研究で多くの情報が手に入りそうで非常に期待しておりますけれども、2点だけ 1点は、食品へのダイオキシンの移行についてですが、大気環境、あるいは土壌環境 のダイオキシンの濃度との関連というのが分かれば、長期的な削減計画に生かせるかな と思っております。 それから二つ目は、ダイオキシンに関しては国際的な協力というのが大事かなと思っ ているんですけれども、WHOとか、OECDというところに呼びかけて、日本でやっ ている研究の成果を発信すると同時に、向こうからも協力いただいてこちらに生かせる ように、そういうことが出来ればいいなと考えます。 ○林座長 ただいまの国際協力、あるいは国際的な情報交換という問題はどうなっておりますで しょうか。 ○事務局(中島) 環境庁でございますが、私どもが把握しております限りでは、現在、ダイオキシンに ついて、例えばOECDの場などで情報交換は行われていないというふうに思っており ますが、今回、私どももかなり大がかりな調査が出来ますので、今後、OECDなどの 会議の場でそういった問題についても意見を伺ってみたいというふうに考えます。 ○事務局(阿部) 厚生省でございますが、各班の主任研究者を主体とする連絡調整会議の中に、外国の 研究者にメンバーとして参加いただきまして、その中で情報の交換、あるいは国際会議 での情報疎通のルートを強化する形でやってまいりたいと考えております。 ○高田委員 先ほど、清水先生からお話がございましたので、労働省関係でどんなことをやるかと いうことを簡単にお話ししておきます。労働省では労働者保護の立場から、焼却場にお ける排出作業、監視作業等様々な作業における労働環境の調査を行うことを考えており ます。 ○環境対策室長 農水省でございますが、お答えしたいと思います。例えば農業関係では、昭和60年ぐ らいから5ヵ年ぐらいかけて環境庁の予算をいただきながら、ダイオキシンの関係の調 査をした経緯がございます。今回、科学技術庁の方の予算で、4省庁で連携して、先ほ ど説明のあった話に着手するということになっておりますので、これらの成果を踏まえ て、今後のあり方については検討していきたいというふうに考えております。 ○林座長 どうもありがとうございました。時間がまいりましたので、今後の予定について事務 局から御説明いただけますか。 ○事務局(阿部) 本日、いろいろ有益な御意見をいただきまして有り難うございました。それでは、今 後の予定について申し上げます。次回につきましては、今年度の研究成果がある程度揃 います来年の春に開催させていただきたいと思います。それ以降につきましても、研究 の進捗状況に応じまして、随時開催させていただきたいと考えております。以上でござ います。 ○林座長 どうもありがとうございました。十分な議論が尽くせなかったところもございますが 以上で本日の議事を終了させていただきたいと思います。 これで第1回目のダイオキシン類総合調査検討会を閉会いたしたいと思います。これ からもよろしくお願いいたします。本日は、夕方遅くまでありがとうございました。 *1 コホート研究 要因曝露の有無で調査集団を設定し、各集団中の疾病の発生状況から要因曝露と疾病 の因果関係等を分析する。 <例> 喫煙者と非喫煙者の2群間で肺がんの発生を比較し、喫煙と発がん発生の因果関係等 を比較する。 *2 イムノアッセイ法 タンパク質などは抗原抗体反応により非常に特異的に抗体と反応して沈殿などを生じ る。例えば検出したいタンパク質の抗体を作製し、これをラジオアイソトープで標識し ておくと、抗原抗体反応によりある画分に放射能がどれだけ現れるかで定量できる。こ れをラジオイムノアッセイ法とよび、酵素反応を利用して分析するものは酵素イムノア ッセイ法という。この応用として低分子化合物でもタンパク質などに結合させることに より同じ方法で分析できる。この方法の特徴は微細な化学構造の違いを区別できる特異 性と高感度性であり、検出できる量はfg(10マイナス15乗g)からag(10マイナス18乗g)に まで達する場合がある。 *3 症例対象研究 疾病の有無で調査集団を設定し、各集団中の要因の曝露状況から疾病と要因曝露の因 果関係等を分析する。 <例> 肺がん患者(患者群)と肺がん患者でない者(対照群)の2群間で喫煙者の割合を比 較し、肺がん発生と喫煙の相関関係等を比較する。 上記検討会に関する問い合わせ先は、 厚生省生活衛生局企画課・生活化学安全対策室 馬場・河村 TEL:03-3503-1711(2418、2424) |