情報源名称:環境庁報道発表資料 平成9年版「化学物質と環境」について ┌―――――――――――――――――┐ |平成10年1月7日 | |環境保健部環境安全課 | |課 長:中島 正治(内線6350)| |保健専門官:尾崎 福栄(内線6355)| |担 当:伊奈 英彦(内線6355)| └―――――――――――――――――┘ (12月25日開催の中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会(七野護委員長、 (社)日本食品衛生協会専務理事)に報告、審議を経て了承されたもの) ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――┐ | 「化学物質と環境」(通称「黒本」)は、環境安全課が昭和49年以来実施して| |いる化学物質の環境調査結果をまとめて公表する年次報告書である。今回公表する| |平成9年版「化学物質と環境」は、平成8年度化学物質環境安全性総点検調査結 | |果、平成8年度指定化学物質等検討調査結果、平成8年度有機スズ化合物に関する| |環境調査結果及び平成8年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果等につい| |てとりまとめたものである。 | └―――――――――――――――――――――――――――――――――――――┘ 1.平成8年度化学物質環境安全性総点検調査結果の概要 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律における既存化学物質を中心に、環境中で の残留状況を調査したものである。 (1) 環境調査 水系・大気系の一般環境において、合計40物質について環境残留性を調査したところ次 のとおり。なお、この結果これまでの調査で、758物質について調査が行われ、そのう ち、293物質が一般環境から検出されたこととなる。 {1} 水系調査 ア.水系環境中に残留していると予測される、フェノール等37物質について、残留が予 測される媒体(水質・底質・魚類)を選び全国56地点で調査を実施した。 イ.その結果、フェノール等12物質が検出された。このうちヒドロキノンなど数物質に ついては、今後も環境調査を行い、推移を監視することが必要と考えられる。 {2} 大気系調査 ア.大気系環境中に残留していると予測される、フェノール等21物質について、全国1 8地点で調査を実施した。 イ.その結果、フェノール等10物質が検出された。このうちフェノールなど数物質につ いては、今後も環境調査を行い、推移を監視することが必要と考えられる。 (2) 水質・底質の経年監視(水質・底質モニタリング) {1} 環境中に残留する物質の水質・底質中の濃度を経年監視する調査であり、平成8年 度は第一種特定化学物質を中心に、HCB(ヘキサクロロベンゼン)等20物質について 全国18地点で調査を実施した。 {2} その結果、水質からは、o-ジクロロベンゼン等5物質が検出された。底質からは2 0物質すべてが検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を継続することとする。 (3) 指標生物の経年監視(生物モニタリング) {1} 生物を対象に、環境中に残留する物質の濃度を経年監視する調査であり、平成8年 度は第一種特定化学物質を中心に、PCB等29物質について全国21地点の魚類8種、 貝類2種、鳥類2種について調査を実施した。 {2} その結果、PCB等21物質が検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を 継続することとする。 2.平成8年度指定化学物質等検討調査結果の概要 指定化学物質を中心とした物質について、環境中での残留性及び人への暴露状況を調査す るものである。 (1) 環境残留性調査 指定化学物質及び第二種特定化学物質について、トリクロロエチレン等10物質について 、全国69地点(水質・底質36地点、大気33地点)で調査したところ、10物質すべ てが検出された。 (2) 暴露経路調査(日常生活において、人がさらされている媒体(一般大気、室内空気、 食事)別の化学物質量に関する調査) 指定化学物質及び第二種特定化学物質について、トリクロロエチレン等6物質について、 全国9地区各3世帯において調査したところ、一般大気及び室内空気からは6物質すべて が、食事からはクロロホルム及び1,2-ジクロロエタンの2物質が検出された。 (3) 環境残留性調査及び暴露経路調査の結果からの考察は次のとおり。 {1} 四塩化炭素、クロロホルムは環境中に比較的高い濃度で広範囲に残留している。ト リクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパ ン、1,4−ジオキサンは、環境中に広範囲に残留している。これらの物質については、環 境汚染の状況を監視するため、今後とも引き続き調査を実施していくことが必要である。 {2} 2,4−ジアミノトルエンは、底質において平成5年度と同程度の検出頻度、検出範囲 で検出された。今後の製造・輸入量等の動向を見つつ、一定期間をおいて調査の実施を検 討することが適当である。 3.平成8年度有機スズ化合物に関する環境調査結果の概要 トリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物について、「生物モニタリング」にお いては生物(魚類、貝類、鳥類)を、また、「指定化学物質等検討調査」においては水質 及び底質を対象として調査を実施した。調査結果についての評価は次のとおり。 (トリブチルスズ化合物) トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、生物及び底 質においては概ね横ばい傾向であり、水質においては、改善ないし横ばいの状況にある。 現在の汚染レベルが特に危険な状況にあるとは考えられないが、一部地点では高濃度での 検出がみられ、水生生物等への生態影響の可能性もあることから、引続き環境汚染対策を 推進するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。 (トリフェニルスズ化合物) トリフェニルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、底質及び 生物においては概ね横ばい、または改善の傾向にある。なお、水質は2年続けて全地点で 不検出となった。 現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されてい くと期待されているが、一部地点では高濃度での検出がみられることから、今後も引続き 、環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。 4.平成8年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果の概要 ダイオキシン類、PCBsの一種であるコプラナーPCBsについて、環境中(底質及び 生物)の残留状況を調査した。調査結果についての評価は次のとおり。 (ダイオキシン類) ダイオキシン類の一般環境への汚染状況は、前年度までの調査結果と比較して大きく変化 したとは認められないが、環境中から広範囲に検出されているため、今後とも引き続きそ の汚染状況の推移を追跡して監視していくことが必要である。 また、ダイオキシン類の発生源や環境中挙動などの汚染機構の解明に努めるほか、内分泌 攪乱物質に係わる情報を含め、毒性関連知見の収集に努めることも必要である。 (コプラナーPCBs) コプラナーPCBsの環境残留は、主にPCB製品からの環境放出に由来すると考えられ ており、PCBは、既に昭和47年に使用が中止され、昭和49年6月には「化学物質審 査規制法」に基づく第1種特定化学物質に指定されるとともに、平成4年7月には「廃棄 物の処理及び清掃に関する法律」に基づく特別管理産業廃棄物に指定されていることから 、その汚染の拡大の可能性は少ないと考えられる。平成8年度は調査地点を増やした結果 、コプラナーPCBsは、環境中に広範囲に残留しており、一部の地点で高濃度の検出が みられることから、今後とも引き続き汚染状況を調査し、その推移を追跡して監視するこ とが必要である。